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二人の約束
悠斗side
日に日に僕の想いは大きくなっていく。
ちょっとしたことで、イラッとしてしまうことが増えていた。
今までみたいに笑っていたいのに…。
『おい、斎藤! お客さん』
他愛もない話をしていた僕たちの間に、君への訪問者がやってきた。
二人して教室のドアの方を見る。
『あっ、悠斗ごめん…ちょっと行ってくる』
その人物の姿を確認すると、迷うことなくガタッとイスから立ち上がり、僕にそう言い残して歩いていく。
僕は、直己の後ろ姿を見つめることしかできなかった。
楽しそうに会話をしている姿に、息が詰まる…。
その場にいられなくなった僕は、逃げるように教室から駆け出した。
向かった先は学校の屋上…
誰にも見せられない…
空を見上げて、こぼれ落ちそうになる涙を堪える。
直己…
僕はもう、自分の気持ちを隠し通すことができないみたいだ…
だって、こんなにも好き…
『悠斗…』
小さく呼ばれた名前に、ドクンと胸が鳴る。
どうすることもできなくて、僕はその場で動けなくなってしまった。
『悠斗…』
もう一度、名前を呼ばれる。
今振り返ると、涙が溢れてしまいそうで…
直己の顔を見ると、自分の気持ちが溢れだしそうで…
僕は背を向けたままでいた。
『俺…悠斗が好き…』
微かに聞こえた直己の声…
直己が僕を好き…?
好きって気持ちが大きすぎて、幻聴が聞こえてしまっているの?
『ねえ悠斗…好きなんだ…』
『うそ…』
『信じてもらえないかもしれないけど、ずっと好きだった…』
僕の頬に涙が伝う…
直己も僕と同じなの?
僕が直己を好きな気持ちと同じ?
『好き…僕も、直己が好き…』
ゆっくりと振り返り、流れた涙を拭うのも忘れて、僕はニッコリ微笑むと、初めて自分の気持ちを言葉にした。
直己はそっと僕の頬に触れると、親指で涙を拭ってくる。
その指先が震えているのを感じた。
『やっと言えた…』
そう言って、直己がふんわりと笑った。
僕は直己の笑顔が好き…
ずっとずっと大好きだから…
僕たちは、顔を見合わせるとクスッと笑った。
何だか少し照れくさくて、でも嬉しくて、うまく表現できないけれど、僕の目の前には直己がいる。
それだけで、こんなにも温かい…
『好き…』
『俺も…』
『いっぱいヤキモチ妬いたんだから…』
『もう悠斗だけ…』
『約束だよ…』
『うん…約束する』
おでこをくっつけて約束を交わす。
そして、触れるだけのキスをした。
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