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LEVEL-1

「や、やめ……っんっ」  うわ、やばっ。めっちゃ気持ちいい!  さっきからシヴァのが気持ちいいトコを小突き、きゅっと締まった入口を執拗(しつよう)(こす)り上げてくる。だんだん覚醒してくる記憶に戸惑いながら、俺はただこの身一身でシヴァの熱情を受け止めた。 「ポチ、気持ちいいか……」 「あうんっっ!」  あーあ。こんなことになるならポチなんてふざけた名前でプレイするんじゃなかったな。  まあ、まだ一回目だし、お試しでいいかってゲームを始める時に適当にいい加減な名前をつけてしまったのが運の尽き。プレイヤー名で呼ばれるたび、何とも言えない笑いが込み上げる。 「ポチ……っっ」 「……んんっ」  うはっ、今、めっちゃイイトコに当たったのに。呼び名に反応して思わず吹き出しちゃったよ。  どうやらシヴァは行為の最中に相手の名前を呼ぶのが癖のようで、ずっと俺が設定した勇者の名前を呼んでいる。 「シヴァ、そ、そこぉ!」 「ポチ、ここか! ここがイイのかっ!」  ううっ……、気持ちいいのにやっぱり集中できないや。  今にも吹き出しそうになるのを(こら)えながら、俺は必死に目の前の男にしがみついた。 * * * * * * *  事の起こりは今から数時間前にさかのぼる。学校から帰って来た俺は、早速買ったばかりのRPGをプレイし始めた。 「うーん、プレイヤー名かあ。何にしようかな……」  そのゲームは昔懐かしい中古ゲームで、勇者が戦士、魔法使い、僧侶の三人をお供にモンスター退治の旅に出掛ける王道ゲームだ。俺が生まれる前に発売されたゲームで、もちろんプレイするのは初めてだ。 「まあ、一回目は様子見だしポチでいっか」  ゲーム内容は今のRPGの原点のような単純なものだし最初はお試しプレイだとばかり、俺はプレイヤーの勇者に安易な名前をつけてしまった。 「へえ、お供の名前も決められるのか」  それから最初は戦士が犬、魔法使いが猿、僧侶にはキジとお供にも適当に名前をつけたりして。 「それなら勇者は桃太郎だな」  思わず吹き出しながらプレイヤー名を設定しようとして、やっぱり少しは真面目にしようと戦士はシヴァ、魔法使いはルカ、僧侶はシンと結局は有りがちな名前で登録。  あ、魔王も名付けられるんだ。じゃあ、魔王はガイ、と。 「んで、ゲームスタート、と」  お供と魔王の名前が決定して満足したからか、あろうことか肝心の勇者の名前はポチのまま変更せずにスタートボタンを押してしまう。 「あ! しまった!」  ゲーム画面を見て最初こそ軽く後悔はしたが、 「……ま、いっか」  たかがゲームだし、しかもお試しプレイにそこまでこだわるのもなんだかなあと俺は特に気にせずそのままゲームを始めてしまった。

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