6 / 13

02

「また何か考えてんのか」 「またって……」 「なんつーかさ。お前、戦闘時とやってる最中以外いつもなんか考え込んでねえ?」 「あ……」  ……確かにそうかも。  そう言えばせっかくシヴァと仲間になったのに、シヴァとは会話らしい会話をまだしていない。 「……あのー、シヴァ?」 「あん?」  やっぱ何か話した方がいいよな。コミュニケーションってすっごく大事。体に聞いてやるよとかよくシヴァに言われるけど、ホントは言葉にしなきゃ全然伝わらない。  恐る恐る上目使いでシヴァをちら見したら、一瞬驚いた顔で俺を見て、次の瞬間には思い切り顔を背けられた。 「その顔は反則だろ……」 「え?」 「いや、なんでもねーよ」 「?」 「……っっ、こっち見んな。それより俺に聞きたいことがあるんだろ」  そう聞かれたけど、 「えっと、あのさ」 「おお」 「……」  聞きたいことはいっぱいあった。だけどなんだか聞いちゃいけない気がして、それ以上の言葉が口から出なかった。  なんで格闘家なんかやってるのか。家族はどうしたのか。その代わりに、 「あのさ、何度も言ってるけど俺の名前はポチ(碧人)だから」  また、そんなとんちんかんなことを言ってしまう。 「はいはい。わかってるっつーの」 「違っ、俺はポチ(森尾碧人)……」 「わかったわかった」  因みに、自分では名前は碧人だって言ってるつもり。なのに氏名の森尾(もりお)碧人(あおと)で言ってみても、何故だか俺の口からはポチだとしか発言出来ない。  これってきっと、ゲームを始める時にポチって設定したからだ。きっと、この世界だとこの名前しか通用しないんだろう。 「……本当の名前を呼んで欲しいんだけどな」  特にやってる時には。 「なんか言ったか?」 「いや、別に。それよりシヴァっていつから一人旅してんの?」  仕方なく、当たり(さわ)りのないことを聞いてみた。 「さあ、忘れちまったなあ」  続けてなんで旅してるのか聞きそうになった。けれど、すんでの所で口をつぐむ。 「ポチ?」 「あ、うん。えっと……」  きっと複雑な事情があるんだと思う。お試しでゲームをしてるお気楽な俺とは違ってさ。 「あ、あのさ……」  なんとか当たり障りのない話題を捜して口を開いたその時、 (――ザザザッ)  茂みの中で何かが動いた。

ともだちにシェアしよう!