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「ポチ、走るぞ」
「わっ!」
こっちの世界の天候はRPGの定義よろしく、エリア毎 にがらりと変わる。砂漠の次は零下のブリザード地帯だったりして、それに準じる天候はまさに予測不能だ。
シヴァに手を引かれ、ぬかるみ始めた道を駆け出した。幸い次の村まで30分とかからず、最悪の状況だけは免れそうだ。
(それよりさっきの特訓の成果、うやむやにされてないか?)
自分ではかなり頑張ったつもりだけど、シヴァより先にイってしまったことには変わりない。だからそれはそれで有り難くもあるんだけど。ただ、いつもより我慢出来たことだけは評価して欲しい。そんなことを思っていたら、
「わ、わわっ!」
何かに足を取られ、躓 いてしまった。
(しまった! 足元に水溜まり……っ)
万事休す。
「ポチ!」
が、転ぶ寸前にシヴァに腹を抱えられ、俺はなんとか転ばずに済んだ。
「大丈夫か?」
「ご、ごめん!」
その体勢が恥ずかしくて慌ててシヴァから離れようとしたその時、
「わわわっ」
今度はしっかりと、何か細長い物体を踏んでしまう。
「プギャッ!」
「……へ?」
(ぷぎゃ???)
恐る恐る足元を見遣ると、
「わ、うそっ?!」
所々泥水が溜まった地面に、ぐったりと横たわった黒猫の尻尾を踏ん付けてしまっていた。
「うわ、マジか。大丈夫か?」
幸いその場所は大きな木の下で、慌てて黒猫を抱き上げる。
「ポチ、どうした?」
「シヴァ! こ、これ」
「……黒猫?」
「どうしよう。怪我してるよ。俺が思い切り踏ん付けたから……」
「いや、そんくらいでこの怪我はないだろう」
よく見るとあちこちに切り傷が点在し、幾つかの傷からは少量の血が流れていた。もしかしたらこの子はモンスターにやられたのかも知れない。
「仕方ない。こいつも連れてくぞ」
「うん!」
「ポチ、急げ」
このくらいの傷ならポーションや薬草で治るし、この世界の宿屋で一日眠れば体力を全回復出来る。この子にはそれがどこまで効くのかはわからないけど、とにかく俺達は宿屋へと急いだ。
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