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第八章・6

 体に撃ち込まれた弾丸を摘出するために、慎也は手術室へ直行した。  薄暗い、寂しい廊下で、悠は震えながら彼の生還を祈り、待った。  その間、警官が来て事情聴取をしていった。  氏名から職業から、何から何まで訊ねられたが、一つだけ応えるのにためらった質問があった。 「久貝さんとは、どういうご関係ですか?」 「……恋人、です」 (慎也さん、勝手に恋人認定しちゃって、怒らないかな?)  やけにしつこい質問攻めに、悠は怒りを通り越して悲しくなった。  今はただ、祈っていたいのに。  慎也さんが無事でいるよう、神様にお願いし続けたいのに。  警官や組員の話す雑音を照合していくと、どうやら慎也を撃ったのは弟勢力の一人らしかった。 (もしこれで慎也さんが死んじゃったら、僕は弟さんを殺そう)  慎也がくれた金で殺し屋を雇い、復讐する。  そんな妄想まで浮かんでは、はじけた。  ようやく手術中のランプが消えた時、悠は少し人相が悪くなっていた。  医師が出てきて、そんな悠に語り掛けてくれた。 「一命はとりとめました。後は、ご本人様の気力でしょう」  ストレッチャーに乗せられた慎也に、悠は縋りついた。 「慎也さん、起きて! 眼を覚まして!」  いけません、と看護師に引きはがされ、悠はフロアにぺたんと座り込んだ。 「慎也さん。死なないで」  悠の言葉をしみ込ませたまま、慎也はICUに消えていった。

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