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デート3

―――これって――思いのほかデートしてるよな… 寝具専門の店を出た二人は、その足でメンズ服専門の店へと入り―― どんな服を選べばいいのかと迷う葵の様子に これ幸いとばかりに、にこやかな笑みを浮かべ… まるで獲物を見つけたハイエナのように近寄ってくる男性店員を 信が笑顔でやんわりといなしながら 葵に似合いそうな服を信自身が身繕(みつくろ)うと 葵は信が見繕った何着かの服を持って試着室へと入り 今は葵が三着目の服を試着して出てくるのを待っているところなのだが―― ―――にしてもコイツ等一体何なんだよ… 葵が試着を始めてから約20分… 他にも試着室は空いているにも関わらず 何故か葵の入っている試着室の周りには人だかりができ始め… 今では店員や男女のカップルを含めた約12,3人余りが 葵の入っている試着室に熱い視線を送り… 葵が試着室から出てくるのを今か今かと待っているかのような状態で―― ―――…どっか行けよまったく…葵は見世物じゃねーんだぞ! と――信は心の中で毒づき 葵の入ってる試着室の横の壁に腕を組んで寄りかかりながら 面白くなさげに周りに睨みを利かせるが―― 「…かっこいい…」 「あの人モデルさんかな…ヤバイ…チョータイプぅ~…」 「オイ。恋人の隣でそーゆーことゆーのヤメロ?別れるぞ。」 「なによ。アンタだってさっき試着室に入ってた人に見惚れてたでしょ~?  お互い様よ。」 「今試着室に入ってる人も美人だけど  あそこの連れの人もイケメンすぎ…目の保養だわ~」 などと思い思いの事を口にしながら信の睨みなど全く意に介した様子もなく… むしろ女性の客にとっては そんな不機嫌な様子の信の姿すらもたまらなく魅力的に映るのか 頬を染め…信に見惚れた様子で ますますその場から離れがたいといった雰囲気を醸し出す始末で―― ―――女性に見惚れられんのは悪い気はしねーんだけどさ…    今はほっといててくんねーかなぁ~… 「ハァ~…」と…信がそんな周囲の状況に呆れ 深い溜息を吐き出したその時 ―――ん…? 信が何気なく上げた視線の先に 後方で他の客に隠れ…まるでコチラの様子を伺うようにして立つ 若い三人の男性が目につき… ―――…?なんだアイツ等…なんか…嫌な感じだな… 周りの客とはどこか様子が違う感じのその三人に信は眉を(ひそ)め 不信感を隠す事無くその三人を見つめる… そこに葵の入っている試着室のドアが キィ…と小さく(きし)む音を立てながら開き―― 「…信…コレは――どう…かな…変じゃない…?」 オズオズと試着室から姿を現した葵に 信は顔を綻ばせ「いいんじゃないか?」と声をかけようとしたその時 周りからは「おお…」とか「素敵…!」いった声が上がり―― ―――…コイツら… 周りの客に出鼻をくじかれる格好となった信は面白くなく… 自分でも子供っぽいとは思いながらも信は不機嫌そうに眉間に皺を寄せる… そんな信の様子に葵が気がつき―― 「…信…?」 「ッあ…?…ああ悪い…いいんじゃないか?その服…似合ってるよ。  でもまあ…さっすが俺が見立てただけの事はあるというかなんというか…  ホント…お前は何着ても似合うな…羨ましいよ。」 「っ…そう…かな…」 「ふふ…」と葵は少し照れ臭そうに微笑み そんな葵の笑みに周りにいた男性客や店員らは釘付けになる… それがまた信を面白くなくさせ―― ―――ッだから…っ、何でお前らは葵の事見てんだよ…    用がないならさっさとどっかいけ。    葵は俺の―― 「…ッ、」 不意に湧いた葵への独占欲に信はハッとなり… それを誤魔化すかのように信は取り繕った笑みを浮かべると 内心の焦りを隠しながら試着室から顔を覗かせていて葵に向け話しかけた 「…試着はもう…コレで十分だろ。  とりあえずさっき選んだやつと試着で着たやつを合わせて買ったら  此処を出ようか。」 「うん。分かった。」 信の笑顔を見て葵はホッとしたのか 再び信に向け…はにかんだ笑みを見せると 元の服に着替えるために葵は試着室へと戻り… 今の信と葵のやり取りからもう葵の試着は終わったのかと悟った他の客たちは 皆名残惜しそうにその場を去っていく… しかし先ほどから後方で他の客に交じってコチラの事を見ていた若い男性客三人は その場から動くことなく…何やら固まってヒソヒソと話をしており―― 「…?」 ―――ホント何なんだ?アイツ等…さっきから隠れてコソコソと…    …感じ悪いな… 信はその三人の様子に怪訝な表情を浮かべながら見つめ続ける… そこに着替えを済ませた葵が 試着に着た服を抱えながら試着室から出てきて―― 「お待たせ信。  …信…?」 「ッ!おっとそれじゃあ――さっさと会計済ませて此処を出るか。」 「うん。」 そういうと二人は選んだ服を抱え、会計を済ませると足早に店を後にし―― そんな二人の後を追うかのように 先ほどから信たちの動向を伺っていた三人も何も買わずに店を後にした…

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