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デート2

「俺を――見つけてくれて…拾ってくれてありがとう…信…」 「…ッ、葵…」 葵の見せたその微笑みに 信は思わず見惚(みと)れ―― アウトレット内の店舗が立ち並び… まばらとはいえ人々が行きかう通路のほぼ真ん中で 二人は暫くの間互いの顔を見つめ合う… しかし長身でモデル並みの美形と言っていい顔立ちの2人の男性が 妙に甘い空気を漂わせながら向かい合って立ち並ぶそのさまは それはそれは人の目を惹き―― ―――ハッ… 自分たちを取り囲む周囲の空気にいち早く気づく事が出来た信は この状況に焦り… ―――っいかんいかん!    何こんな所で葵に見惚れてるんだ俺っ!しっかりしろっ!! 「~~~ッ、ちょっとコッチ来い!葵…っ、」 「え…何…?わっ、」 慌てた様子で信は葵の手を握りしめると 少し強引にその手を引きながら 逃げる様にして信は葵を連れてその場から立ち去る 「ッ、信…、」 「…悪い…少しだけ我慢しろ。」 突然の事で戸惑う葵を後目(しりめ)に信はそういうと 脇目も振らず…角を曲がった先にあった店舗に二人は駆け込む… するとそこはどっちにしろ二人で訪れようと思っていた寝具専門店で―― 「フゥ~…焦ったぁ~…  ――お?ここは――寝具専門の店か…ちょうどいい葵。  中を見て回るぞ。」 「え…何で…?」 「何でってお前…お前用のベッド!これから必要になるだろ?  いくら俺のベッドがキングサイズとはいえ――  何時までも二人で寝てらんないし…  だからホラ…探しに行くぞ?」 「ぇ…ああ…うん…」 そういうと信は握ったままの葵の手を引き 何処か乗り気ではない葵を連れて店内の奥へと進んでいく 「…へぇ~…けっこー色んな種類のベッドがあるんだなぁ~…  なぁ…葵。」 「………」 様々なベッドが展示されているスペースを 信は一つ一つ興味深げに見て回るが―― 葵は浮かない顔のまま… 無言でそんな信の後をついて歩く… ―――別にベッドなんか…いらないのに… 「はぁ…」 「どうかしたか?」 「…別に…」 「…?」 少し不貞腐れた様子で歩く葵を余所(よそ)に 二人が暫く店内を見て回っていると、突然信の足が止まり―― 「コレなんていいんじゃないのか?  お前のイメージにピッタリだ。」 「…?」 葵が視線を上げ、信が見つめる先を目で追って見てみると そこには真っ白なレースの天蓋に覆われた これまた真っ白な…まるでお姫様でも眠りにつくようなイメージの クイーンサイズのベッドが葵に目に飛び込んできて―― 「な?お前にピッタリだろ?」 「…どこが…?アンタ目がおかしい…」 「え~?そーかぁ~…?似合うと思うんだけどなぁ~…俺は。  スノーホワイトなお前さんのイメージにピッタリ。」 「………」 葵からの刺々(とげとげ)しい視線と物言いにも信は動じる事無く ただ面白そうにニヤけながらそのベッドを眺める… すると信と繋いでいた手を葵が軽くクイッと引き―― 「…ん?どうかしたか?葵…」 「…らない…」 「…?」 「…ベッド…いらない…」 「…どーして…お前だって一人で伸び伸びと…」 「ッ、だってまだ…っ、寒い…、から…」 口ごもるようにそう呟くと 葵は耳を赤くしながら俯き… 繋いでいる信の手をキュッと握りしめる… 「…だからまだ…信と…一緒がいい…」 「…葵…、」 葵の口から一つ一つ躊躇いがちに呟かれたその言葉に… 今朝から葵と離れがたいと感じていた信は “自分もだ”とその気持ちを示すかのように葵の手を強く握り返す… 「…そう――だよな…  まだ寒い…よな…」 部屋の温度は常に一定に保たれている 寒いだなんて事はあり得ない… ただ―― 「…寒いのは――嫌だよな…」 「…うん…やだ…」 二人の間にはもう…離れがたいと思わせる“何か”が芽生え始めており… 二人はきつくその手を結ぶ… 「…俺もお前も寒がりだし…  まだ――このままでいっか…  ベッドなんて何時でも買う事が出来るし――」 「…うん…まだこのままがいい…  だって信…湯たんぽに丁度いいし。」 「…結局俺は湯たんぽかい。」 二人は顔を見合わせ、その場でクスクスと小さく笑い合うと 手を繋いだままベッド売り場を後にした…

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