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デート5

フードコート内にあるトイレは客を不快にさせないためか あまり目立たず、奥まった細い通路の先にあり 更には通路が少し薄暗く感じるためか、葵はおっかなびっくり先へと進む… ―――…お化け屋敷じゃないんだからさ…    狭い通路はともかく照明もっと明るくしてよ…怖いよ… 人とすれ違う際、一人が肩を軽く逸らさなければ すれ違う事が出来ないくらいの広さの通路を進んでいくと 男子トイレの入り口が見え、葵は少しホッとする… しかし―― ―――…何アレ…“掃除中”…? トイレの出入り口にあたるドアの前に “掃除中”と書かれた黄色のサインボードが見え 葵は(掃除中だったら仕方ない…他のトイレを探そう…)そう思い 踵を返そうとするのだが いつの間にか自分の真後ろにいた人に葵は思い切りぶつかってしまい―― 「ってぇ~なぁ~…」 「ッ!ごっ…ごめんなさい…っ、」 葵や信よりも少し背の高い… 体格が良く、(いか)つい顔立ちのその男性に葵は怯むが それよりも一刻も早くこの場を立ち去りたいという気持ちの方が強かった為 葵は男性に頭を下げ、焦りながらも足早にその男性の横を通り過ぎようする だが… 「おっと…トイレに行くんだろ?だったら引き返すことはねーよ…」 「え…でも…掃除中って…」 男性は横を通り過ぎようとした葵の二の腕を素早く強くガシッと掴み その腕を引っ張りながら戸惑う葵の身体を再び自分の前へと立たせると 今度は葵のその両肩を背後から両手でガッチリ掴んで葵を前へと押し始め… それに焦った葵は身を捩りながら後ろの男性に声をかける 「ッ、あ…あのっ!俺…他のトイレを探しますんで離して…」 「…こっから他のトイレは結構遠いぞ?アンタ…漏らしちゃうかもなぁ…」 そう言うと葵の肩を掴んでいた男性の片手が 背後からそのまま葵の下半身へとスゥ…っと伸び… 葵のあらぬ場所を男性がその大きな手で スラックス越しに撫で(さす)る様に触れてきて… 「ッ!?ちょっとっ、」 男性のその行動に葵は更に焦り… 流石に身の危険を感じた葵は自分を背後から押す男性から逃れようと その身を捩って暴れ出す… その時トイレのドアが内側にキィ…と開き 中から一人の若い男性がひょこっと顔を覗かせ―― 「あっ…」 ―――助けてっ! 葵は咄嗟にその男性に助けを求めようと息を飲みこみ 大声を出そうといきんだ次の瞬間 「おっと…させねーよ?」 「ん”ぅっ?!」 背後にいた男性の大きな手が葵の口を(ふさ)ぎ…葵の声を封じ込める… そこにトイレから顔を覗かせていた男性が その様子に呆れたように口を開き―― 「…遅かったじゃねーか…待ちわびたぜ。」 「…悪い。」 ―――ッ?! 自分の口を塞いでいる男性と 今目の前でトイレから顔を覗かせている男性が互いに顔を見合わせ… クツクツと引き笑いをしながらニヤけているさまを目撃し 葵は瞬時に察する ―――この人たち…グルだ…! それが分かった途端 葵は今度こそ死に物狂いで背後にいる男性の手を振り切ろうと暴れ出すが―― 「おい!」 「あいよ。」 トイレから出てきた男性は、手に持っていた銀色のガムテープをビッと千切り まずは暴れる葵の口をソレで塞ごうとする… しかし葵が長い手でソレを押しのけるようにして暴れ―― 「チッ…オイ、そいつの手ぇ邪魔だ。押さえろ。」 「ったく…手間かけさせやがって…」 そう言われ、背後の男性が葵の口から手を放して暴れる葵の両手首を掴む この瞬間、自分の口が自由になったの葵は見逃さず… 葵は思い切って声を上げようとするが―― 「ッ、たすけ…っ、ん”ーん”ッ!ん”う”ぅ”~~~ッ!!」 「はい無駄~。残念だったな。あとちょっとだったのに…」 葵の前に立つ男性がクスクスと笑いながら葵の口にガムテープを張り 葵の抵抗は一瞬にして(つい)える… 「…オイ、早いとこコイツをトイレに連れてくぞ。」 「ああ…ククッ、楽しみだなぁ~…」 「そーだな…ってお前もう前()ってんのかよっ!  いくら何でも興奮しすぎだろ!まあ…気持ちは分かるけどな…ククッ、」 男たちは興奮した様子で鼻息荒く卑下た笑みを浮かべると 身を捩って嫌がる葵を連れ… トイレの中へと姿を消した…

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