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第103話
「サナとお父様は一緒に行かないんですのん?」
この質問に、その場にいた大人は一瞬黙り込んでしまったが、目線をリンリンに合わせてしゃがみ込むと、ニーナが笑顔で答えた。
「リンリン、大丈夫よ。あとからお父様もサナも私の船に乗り込むわ。だからちょっとの間、私の船で待っててちょうだい」
「……ニーナがそう言うのなら、わかりましたのん」
「リンリンは本当に良い子ね」
そう言って二人は抱き締め合うと、ハルカとリョウジに連れられて、リンリンは橋板を渡り、ニーナの船に入って行った。
そして橋板が、ゆっくりと外される。
まるでニーナたちの退路も断つように。
「さぁ、これであとがなくなりましたわ。お兄様たちを拉致したサーディアン海賊団とやらと、話をつけますわよ!」
ニーナがドレスの袖を捲ると、船内からサーディアンが笑いながら出てきた。
「ずいぶんと元気のいいお姫様だな。ガーシュインより国王に向いてるんじゃないか?」
「あぁ、俺も時々そう思うよ」
ガーシュインが苦笑すると、サーディアンはニーナの前に立ちはだかった。
「初めまして、ニーナ姫。私はこの船の主でサーディアンと申します。以後お見知りおきを」
そう言うと彼は跪き、ニーナの手を取ると、その甲に口づけた。
これは貴族ならではの正式な挨拶の仕方だったので、サナもニーナもガーシュインも驚いた。
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