11 / 11
モテ期到来
水輪と打ち合わせをした後、スキルブックを量産しつつ、スキルブック作成を監督。
午後は戦闘訓練を眺めて魔術を教える。
桜火先生達に生徒を任せて、俺は大人や子供達を見ることとなった。
頑張った子にはポーション玉一個プレゼントだよ!
たまに変身すると、おお喜びされる。
初めはフルで戦闘訓練をしていたのだが、今は早めに戦闘を終わらせてハグ会なるものを開催している。変身後の俺、モテすぎて困る。多分、神様の作られた身体だからだろう。変な感覚がすると言っていたし。耳を触られることがとても多い。長いからね。エルフみたいで気になるよね。 中折れしているのがまた、兎っぽくて興味深いんだろう。
あと、強い魔物退治で引率として出ることも増えた。
止めは絶対に譲るけどね。俺はあくまで応援係だから。
そんな俺だが、ある日起きたら知らない場所だった。
香を焚き染めた寝室。お香は何の効果だろう? なにもないなんて楽観視はしない。
「蓮! よくぞ戻った」
「いや、戻ってないから」
そうね。俺の警備、ちゃんとしないとね。油断してたわ。
「ふむ。顔は見れなくはない程度だが、勇者の依代というのがそそる。儂に仕えることを許そう」
「はあ……」
変身してさっさと逃げ出そう。
俺が变化すると同時に、ふすまが開いて剣を突きつけられた子供が現れた。
てか、剣を突きつけてんの魔物かよ。何故か焼けただれているが。
「ふむ。なおさらちょうど良い。さすが勇者は美しい。脱げ」
ニヤリと笑った火野のご当主様。
俺はぎっと睨んで、服を脱いだ。魔物と爺双方にジロジロと見られる。
鑑定を使われたのがわかる。くっ 俺のスキル構成が丸裸になってしまう!
体が熱い。まさか、媚薬効果? 俺のそれが、触れられてもいないのに立ち上がる。
アイテムでどうにかしようと思ったけど、さっきからアイテムが呼び出せない。
間違いなく魔物のせいだろう。
「エッチなのは禁止なはずだけど?」
「そうだ。神の作りしものに手を出そうとすれば、我らは焼かれる。そもそも、我らに生殖能力のある者はごく僅かだ。だが、人間はその限りではない」
「女でもねーのに男同士で番わせてどうすんだよ」
呆れた顔で告げてやれば、魔物はクツクツと笑った。
「もちろん、女とも番わせるさ。したい実験は色々とある。そして、チャンスは今回の一度だけなのだ」
「はぁ」
困ったな。俺は人質は全員生かして返す主義である。必ずクエスト達成率100%じゃないと我慢ならない人で、よくあるNPCを助けろ的なイベントでミスったら発狂する。
しかもリセットできない。地獄である。
どうしたものか。つーかやりたすぎて集中できない。
そんな時、見知った気配がした。
炎が、踊る。
「蓮!!」
「桜火せーんせ♡ 助かった!」
救出舞台が到着したようで、魔物と爺はサクサク処分された。
それと同時に、桜火せんせーが上着をかけてくれる。
アイテム禁止空間も解除された。
「あの、蓮!」
顔を赤くして、桜火先生が俺を包み込む。
「今度から警備してもらわないとな」
ポイズンキャンセラーを取り出して飲むと、俺のそれは通常時に戻る。
良かった良かった。
「で、なんだ桜火せんせー?」
「……なんでもない」
なんだか残念そうだった。
ちょっと魔物牧場作られないか警戒しないと不味いかな。
でもそれより何より、レベル上げ!! 五年間、頑張るぞ!
「魔物に先を越されるなんて!!」
「それで、生殖は可能そうなのか」
「一応、ついてたし勃ちはするみたいだけど。当人にその気はなさそうだよ」
「そこをその気にさせるのよ!! 神の系譜の血筋、絶対に手に入れるのよ」
「そうか。勇者に生殖能力がありそうか……。そうか。何よりの福音だ。我らは、神のおもちゃのままでいるつもりはないのだから」
「では、あの実験は進めますか」
「ばれないようにせよ」
「はっ!!」
「次回では勇者は呼ばれぬ。先代が残した希望、逃しはせぬぞ……!」
俺は知らない。空前絶後のモテ期が訪れることを。
そして、表向き穏やかなまま、五年が過ぎていた。
ともだちにシェアしよう!