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第4話

 1秒たりとでも離れるのが惜しいかのように、二人は何度も口づけを交わしながら争うようにお互いの衣服を脱がす。  もつれ合いながらどうにか寝室にたどり着く。修一をベッドに押し倒すと、彼の腰から下着ごとボトムを引き剥がし、中心にむしゃぶりつこうとしたとき、両頬を捕まれ中断させられた。 「待った」  一体なんだというのか。結婚5年目にして、今更口淫を恥じらうほど少ない行為ではない。むしろ彼はその行為を好んでいたはずだ。 「今日は俺がしてやるから」  ーー修は今、なんと言った?  聞き間違いではない。幻聴ではなく間違いなくそう言った。 「ど、どうしたの!?」 「お前に悪いことしたしな。そのお詫びじゃないけど、俺なりの誠意、みたいな」  修一はもともとヘテロセクシャルで、男性とセックスするのは陽介が初めてだった。そのため、口淫をされる好きだが、するのは好まない節がある。同性のモノを舐めるというのは未だに抵抗があるようだった。  実際、陽介が修一から口淫を受けたのは両手で数えるほどで年に数回、多忙な彼が負い目を感じて陽介の渾身のお強請りに応じてくれたときだけだ。  それがまさか今日、自分から言い出すとは。 「ほら、気が変わらないうちに早く出せ」  照れたように、修一が催促する。  それならばと遠慮なく陽介は自分の陰茎を修一の前に突き出した。  ボロン、と擬音が付きそうなくらい、一般男性の平均より一回り大きく半勃ちになった陰茎が勢い良く飛び出す。 「相変わらずでかいな。顎が外れたら整復してくれよ先生」  そうからかうと陽介をベッドの端に座らせ、自分は床に膝を付き修一は陽介の下半身を弄び始めた。  ちゅ、ちゅ、と大腿の内側を口づけしながら焦らすように攻め、やわやわと睾丸を揉みしだきゆっくりと口に含む。  たっぷりの唾液を絡めてしばらく下で転がしたあとようやく陰茎を攻め始めた。  その間も彼の両手は陽介の太ももやら鼠径やら尻やらを撫で回している。時々上目遣いで見上げては、視線の合った陽介にいたずらに微笑んだ。  陽介の直球で大胆に陰茎を攻めるやり方とは違う、焦らすような攻めに興奮を覚えつつも、納得がいかないやり方に陽介は少し苛立つ。  ーーこんなやり方教えた覚えはないぞ。後で問い詰めるべきだろうか。  だが今は無粋なことは言わず楽しむのが先決だと開き直る。  いやらしく見せつけるように舌を伸ばし、ゆっくりと裏筋を攻め始める。修一が陰茎を舐めているという視界の暴力と、やっと訪れた直接的な刺激に思わず声がもれる 「……うっ……」  背筋をゾクゾクと快感が登ってくる。  裏筋を攻め終わった修一はその後は横から舐めたり、先端を尖らせた舌で刺激したり、鬼頭だけをしゃぶったりと好き勝手弄んでいた。 「修ッ、も、もう」  焦らさられて焦らされて、ついに我慢の限界が近づいた陽介が懇願する  仕方ないなとでも言うように陽介を見やり、修一はとうとう陰茎全体を口に収める。  突然の強い刺激に陽介は耐えられそうになかった。 「イくから、離して……!」  口腔内では止まらず声門付近にまで押し込まれる。絞まる咽頭と口腔で全体を扱かれ、久しぶりの行為と視覚の刺激で、恥ずかしいくらいにあっさりと射精する。 「あっ、あ、あ……!」  射精中も修一は絞り取る動きを止めることなく、逃げ腰の陽介の腰を両手でホールドした。 「うぁ……!ぁ……」  精液を出し切った陰茎からようやく口を離し、そのままゴクリと飲み込んで修一は顔を顰める。 「ぅ、まず……」 「……!」  口ゆすいでくる、と修一がベッドを離れる間余韻に浸る。  ーーまさか飲んでくれるとは。  ひっそりと思い描いていた欲望の昇華を噛み締めながら修一の戻りを待った。 「待たせた」  今度こそ、と戻った修一をベッドに押し倒そうとしたが再び待ったをかけられる。再度のおあずけに陽介は眉を顰めた。 「今日は俺がするって言ったろ」  ポスン、とベッドに仰向けに倒された陽介の上に、修一が乗り上げる。陽介を跨いだまま、いつの間にか手に持っていたローションを手に出すとそのまま自らの後孔をほぐし始めた。  眼前で行われる卑猥な光景に思わず息を飲む。 「……っ、本当に、今日、どうしたの……?」 「ん……たまには、こういうのも、ぁ……いいだろ?」  たまにじゃなくて全然いいです、と言いたかったがかつてないほどに乗り気の、修一の興が削がれてはまずいと飲み込んだ。  いやらしい水音と微かな吐息が陽介を煽る。 「そろそろ……いいな。ほら、入れるぞ」  お前の方も準備万端じゃないか、と言って陽介の陰茎を掴むと、くぷりと修一の後孔がそれを飲み込んでいく。  特等席で卑猥なショーを見せられた身体は陰茎を再度硬く勃起させていた。  かつては頑なだった後孔も、今では少しほぐしただけで陽介の陰茎を難なく飲み込んでいく。陽介との行為に慣れた身体は今では陰茎に触れなくとも、射精せずともイくことができるようになっていた。  本人はその身体の変化についておおいに嫌がっているが、開発した身としては感慨もひとしおである。  太く長い陰茎をその身に収めきった修一は切なげに眉を寄せ、ゆるゆると上下に腰を動かし始めた。  修一の後孔は陰茎を内壁で擦りあ上げながら奥へ奥へと引き込むように絡みつく。腰がとろけそうな快感に思わず熱い吐息が漏れる。 「はっ……、ぁ……あ、……陽介、気持ち、いいか……?」 「うん、すごくいい……」  修一にも気持ち良くなってほしくて、陽介は目の前で赤く色づいている胸の突起に手を伸ばす。だがその手は遮られる。 「なんで? 触りたい」 「いいから……、大人しくしとけ」 「……じゃあこっちは?」 「そっちも、……はっ……だめだ」  陽介と同じくらい硬く勃起させた、形のいい淫猥な陰茎を愛撫しようとしたがそれも拒否される。  後ろの刺激だけでイきたくないという修一は普段なら触れてほしがるのに、何故か今日は陽介に触らせるつもりはないらしい。  陽介はふと気がつく。何度も行為を重ねたからこそわかるのだが、修一の動きは明らかに彼の内部の、より彼が感じるポイントをあえて外すように動いている。  昨晩の埋め合わせのつもりなのか、どうやら修一は陽介ばかりをイかせたいらしい。  ふと悪戯な考えが浮かぶ。

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