1 / 2

第1話

 運命の番って素敵だ。人は時に残酷だっていうけど、俺はとても素敵だと思う。だって、この世に無条件で愛し合える相手がいるって考えたら、素晴らしいと思わないか? 俺は男だけど、オメガになって運命の番であるアルファに出会って恋して子供を作りたいってずっと夢に見ていた。  だが、現実っていうのは実に非情で、俺の性別検査の結果はベータだった。絶望っていう言葉が頭を埋め尽くしたよ。本当に。 「はあ~~オメガに産まれたかったよ~~」 「また言ってんの? 桃介」  ため息を吐くと、親友の藤井が呆れたように言った。だってよう、と頬を膨らませると、今度は藤井がため息を吐いた。 「そんなにオメガになりたいなら、アイツんとこ言ってみれば? 嘘かホントか知らねえけど。いるらしいじゃん、ベータをオメガにできる奴」 「そんなの聞いたことない」 「知らねえの? 有名だぞ?」  友人がさらっと言った内容は眉唾物だ。怪しいマルチ商法みたいな方法だって手を出しかけた俺だが、はっきり言って信じがたい。だって、セックスするだけでオメガにできるなんて、そんな訳ないじゃないか。 「一応さ、その人の名前聞いてもいい?」 「都筑啓介先輩だよ。三年生……一組だったかな?」 「都筑……」 「行くつもり? セックスするんだぜ? 効果ないかもよ」 「いや、ほら、話聞くだけはタダだから!! な? はは」  スマホのメモ帳に名前を入力してメモを取る。この男のことを調べたら、俺もオメガになれるかも! そう思って俺はうきうきで跳ねる心を抑えた。 *** 「桃介くん……だったっけ? そんなにオメガになりたいの?」  藤井から話を聞いてから一週間。俺は都筑啓介について沢山調べた。眉唾だと思っていたその噂は本当で、実際にオメガになったベータもいるらしい。どういう超能力だと思ったが、真実なら幸いなことこの上ない。問題はどうやって都筑啓介にコンタクトを取るか。  都筑啓介は大変綺麗なご尊顔のアルファ様だったわけで、取り巻きが沢山いるわけだ。そんな彼にオメガにしてくれと言いに行くということは、ファンの前でアイドルに抱いてくれ! と頼むようなものである。そんな自殺行為は俺には出来ない。さて、どうしたものかと頭を捻らせていた時、都筑啓介本人に捕まり、人気のない体育倉庫に拉致された。  この一週間ちょろちょろ嗅ぎまわっていたよねと言われたのがなんだか恐ろしかったので、俺はついすべてを暴露した。オメガになりたいことも、それのために利用したいことも。  そうして、冒頭の都筑のセリフである。 「運命ってのが、素敵だなって思って……」 「ふうん、そっか。ま、結論で行くと、出来るよ。ベータをオメガにするのは」 「本当か!?」 「まあね。君のお友達が言ってたように、セックスと、あと一つ条件があるけど……まあ、そんなに願うならしてあげてもいいかな」 「まじか! ありがとう!」 「ふふ、じゃあ、服脱いで」  くすくすと金髪の王子様みたいな容姿の都筑が笑った。俺はきょとんとして首を傾げる。 「ここですんのか?」 「全は急げっていうでしょ?」  それもそうか。俺は妙に説得力のあるその言葉に納得して、スラックスを脱いだ。ダサいと藤井に笑われる恐竜柄のボクサーパンツに手を掛けて脱ぎ捨てると、埃臭いマットの上に座る。  傍に会った丁度いい高さの跳び箱に腰掛けた都筑が、口で勃たせてと頬を撫でてきたので、俺は一瞬戸惑ったが、気が変わられるとマズいと思ってやけくそでゆるく立ち上がったそれを口に含む。独特な雄臭さが口内に広がって、不快感で眉を顰めた。  慣れない口淫に都筑の陰茎が勃たないんじゃないかと思ったが、それは杞憂だったようで、質量を増したそれは、太く、固く、アルファであることを示すような、大きさを誇っていた。 「あれ? アルファのちんこ見るの初めて?」  都筑がくすっと笑った。小さく頷いて、もう一度口に咥えようとすると、都筑が頭を押さえて、もういいよ、と言った。背中を向けるように指示されて、四つん這いになると、何かを準備しているらしい都筑が呟く。 「ベータってさ、濡れないから大変だよね。下準備がいるじゃない?」  どこから出したのか、ローションを手に取った都筑がぬるぬるとしたその液体を俺の臀部に掛けた。ひんやりとしたそれにびくっと身体が震えると、都筑はくすくすと笑う。 「桃介くんって処女でしょ」  細長い指が後孔にゆっくりと侵入してくる。ぬぷぷと挿入ったそれは何度か出入りを繰り返してぐにぐにと固く閉じたそこを解す様に動いた。気持ち悪い異物感に俺は顔を顰める。 「桃介君のエッチになる場所かー……」  こりっと中の指がある一点を掠めると、ばちばちと目蓋の裏に火花が散った。びくっと足が跳ねる。その反応を見て、都筑はにやりと笑った。  こり、こり、こりゅ、とその一点を中心に何度も責め立てられる。同時に俺の、都筑に比べたら貧相な陰茎も擦られて、情けない声が零れた。 「あ、あ、ああ~~~~~!!」  びゅるると勢いよく射精する。力の入らなくなった身体がかび臭いマットに倒れ込む。呆けている俺に、休む間も与えるつもりがないのか、都筑は俺の尻を鷲掴んでぴたりと熱を持ったそれをくっつけた。思わず、息を飲む。  ずん、と侵入したそれは無遠慮に俺のナカをかきわけて進む。ゆっくりと奥まで到達したそれの圧迫感に浅く息を吸うのがやっとだ。初めてだと言うのに痛くはない、痛くはないがこの圧迫感。最奥だろうところまで挿入ったそれに俺はゆっくりと息を吐いてうっすらと涙を浮かべた。  これで、やっとオメガになれるという嬉しさと、処女ではなくなってしまった夢見がちな俺の悲しみと、身体を支配する圧迫感がないまぜになってぽろぽろと涙を零していると、都筑が恐ろしい一言を吐いた。 「あともう少しで全部入るんだけど、流石に初めてだと無理かな」  これで、全部じゃないのか? 結構お腹の中いっぱいいっぱいなんだけど。混乱した頭でそんなことを考えていると、都筑が動くよ、と耳元で囁いた。  ずるると抜けていく感覚。内臓が引き抜かれそうなそれに身体がぞわぞわして自分でも恥ずかしくて耳を覆いたいと思うほどに高い声が零れる。ぎりぎりまで引き抜かれてまた深いところまでずぷんと突かれると下品ともとれる声が漏れた。 「ア゛ッ……ああ、んあ、やめ……そこ、だめ、せんぱ、あ、あ゛あ゛~~~」 「啓介でッ、いいよ、桃介くん……」 「けい、すけ……せんぱ、あ、ああ~~~~」 「………可愛い奴」  ずちゅん、どちゅ、と何度も何度も突かれる。肉と肉がぶつかる音が倉庫内に響いて、淫靡な水音が鼓膜を擽る。時折ごりっと都筑の陰茎がいいところを掠めると、余計に悲鳴のような喘ぎ声が零れた。  どくどくと、体内に温かい液体が流れ込む感触があって、俺はぼんやりとした意識で中に出されていることに気が付いた。 「じゃあ、そろそろかな」  ぼそりと、耳元で都筑が何かを囁く。鋭い犬歯が項に噛みついて、その肌に痕を残した。なにやってんだ。俺は、オメガじゃないのに。 「あ、んあ、おれは、オメガじゃ、ない……!」 「知ってるよ~。元々はベータだもんね。だから、オメガに落としてあげたでしょ。俺とセックスして項噛んだんだから、もう桃介君は俺だけのオメガだよ」 「なん……ちが、おれは、んあ、おれはあ」 「ベータからオメガになって運命の番が欲しいなんて、無理あると思わない? 俺だけの番にしてあげたんだよ。喜びなって。大体、なんの犠牲もなしにオメガに落ちれるなんて、虫のいい話あるわけないでしょ」 「そんな、あ、あん、ああ、あッあ~~~~~~」  頬にキスをされて、再度硬度を取り戻した陰茎に一番深いところを激しく突かれて、俺は情けなくもイってしまった。意識を失う前に見た詐欺師のような男は満足そうに笑っていた。 ***  千崎桃介。かわいい名前をしたまっすぐな少年。彼がオメガになりたいと願っているのを知った時、俺は信じてもいない神様に感謝した。  中学の時から桃介くんのことは知っていて、俺はずっとどうにかして彼と仲良くなる方法を探していた。ベータだろうがオメガだろうが関係ない。好きだと言いたい。そう思う気持ちだけが膨らんで、高校生にもなって彼との接点は未だゼロ、なんていうある日のこと。その彼が俺のことを調べているって話を聞いた。  理由はどうやらオメガにしてほしいから、ということだけれど、確かに俺はとある条件でセックスしたベータをオメガに落とすことができる特異体質だ。その条件というのが、処女であるベータと生でセックスして、中出しすること。なんだけど、正直俺はあんまりしたくはないので、今までオメガにしたのは二人だけだ。どこで漏れたのかそれが噂となって彼の耳に届いたらしい。  なにはともあれこれはチャンスである。折角桃介くんの方から申し出てくれるのなら、これ以上のチャンスはない。ベータから変わりたてのオメガは、発情期がなくても番になれるらしく、オメガにしたうちの一人が、発情期前に好きな男に遊びで項を噛んでもらったら番になれたと言っていたので、俺はそれを利用してあることを思いつく。  問題は桃介君が処女かどうか、なんだけれどそれについては多分問題ないだろう。なぜなら彼は性行為ってもの自体に疎そうだから。駄目なら駄目で監禁するしかないかな。  俺は、きょとんとした顔で見上げる桃介君に笑みを浮かべて、人気のない体育館倉庫に連れていくために、その手を引いた。 続く…?

ともだちにシェアしよう!