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第5話

 その男同士のやりかたを調べている宝やら、浴場で自分の陰部を洗っている宝の姿なんかが脳裡に廻ると、せっかく落ち着かせようとしていたペニスが、たちまちに張りつめてしまったのだからしょうがない。  またおっきくなったと狼狽えている宝の姿にも煽られて、下腹部に痛みまで生じはじめたイアンは、ちょっとだけ彼に(なだ)めさせてもうことにした。あともうすこしだけ、とペニスをゆっくりと宝のなかで滑らせる。 「んっ、んっ、んっ」  顰められた宝の顔には苦痛が滲んでいたが、それでもやはり彼は嫌だと云わないしイアンの身体を押し返してもこない。しかし、――そうか、とイアンは口もとを綻ばせた。 (穿(うが)ちすぎだったみたいだな)  宝への気掛かりはいらぬものだったようだ。イアンは安心で浮かんだ笑みを、次第にいやらしいものに変えていった。 「わからないのか、宝?」 「なっ、なに、が?」 「まぁ、いい」  男のくせに男心がわからないとは、難儀なものだ。そのくせ彼はイアンの男心を擽ることには天才的だ。 「そういうのは臨機応変にすればいい。できるときに、できそうなやり方ですればいいんだ」 「んっ……んっ……そ、なの?……俺、知らないから……んくっ」 「宝、いちど抜くよ」 「えっ?」  びっくりさせないようにそうっと、いきり立ったものを彼のなかから引き抜くと、彼が施してきた潤滑材によって、ぴちゃりと淫靡な音が鳴った。その水音に官能を引きだされ、もういちど彼のなかに戻って赴くままに擦りあげたい衝動かられたイアンは、奥歯を噛んでそれを堪える。 「イアン……?」  イアンは頼りなく名まえを呼ぶ彼のとなりに、ふたたび寝そべった。 「……なんで? もうおしまい? 俺、よくなかった?」  胸で息をする宝が、悲しそうな表情(かお)をして訊いてくる。 「宝、本当は痛むんだろう?」  いくらなかを準備してきたといっても、今日は宝自身がとても緊張している。  宝がギアメンツになり代わって抱かれたときも、真実を明かしたあとに抱かれたときも、彼は生命(いのち)の危険や元の世界に帰れるかという不安、そして自分との別れという悲しみを、ひとり胸に抱えていた。そんな切羽詰まった状況が、宝から余裕を奪っていたのだろう。あのときはそれがかえってよかったのだ。  しかしそれらの問題はすべて解決していて、いまの宝には心に余裕がある。その余裕が本来の彼らしさを顕著にしたのだろう。云いかえれば、今夜の宝には緊張するだけの余裕がある。ということだ。  もうすこし緊張を解いてやらないと、このままでは彼の身体を、そして心にも傷つけることになる。 「大丈夫。して。イアンのいいようにして」 「だめだ。そう焦るな。それとも宝は――」  イアンは腕を伸ばして宝の下肢の隙間に手を差しいれると、探りあてた窄まりの縁を指先で(さす)った。「いま挿れられていて、気持ちよかったか? 俺が出ていったら物足りなくて我慢できない感じがする?」と意地悪な質問をする。  案の定、宝は困った表情(かお)でなんどか唇を咬んで黙り込む。嘘はつきたくないらしい。 「でも、俺はイアンによくなって欲しくって……、それともイアンはもうこんなところに挿れるのは嫌になった? だったら俺はほかになにか、イアンにしてあげられることがある?」  健気な問いかけに、胸が熱くなる。 「宝はセックスがうまくいかなかったら、俺に嫌われると思うか?」 「ううん。そんなことないよ? だって――」  照れたのだろう、宝は腕に顔を擦りつけてきて、「イアンはちゃんと俺のこと好きでいてくれる」と呟いた。 「ああ。そうだ。だから、宝、ゆっくりするから……」  イアンは宝のこめかみに、ひとつキスを落とした。  ペニスを挿入してなかをゆるゆると擦りあげながら彼を溶解していくこともできたが、宝がなかを洗ってきたのいうのならば、せっかくの機会だ。イアンは宝の太ももを開かせると、尻の奥に指をそっと差しこんだ。 「へ?」  彼が意識するまえに、そのままぐいっと肉をわけて指を奥まで入れてしまう。 「ひゃあぁっ」  なにごとかと宝が首をあげて股間を覗きこんだときには、直腸に指を一本収めていた。なかがすこしぬるっとするのは、宝が自分で塗ったオイルかなにかのせいだ。その様を想像してイアンは唇を舐めると、指に纏わりついてくる彼の粘膜を押し広げるようにして、筋肉の緊張をほぐしていった。 「んっ、んっ、んっ……」 「これくらいなら痛くないか?」 「んっ、んっ、う、うん」 「ほら、ちょっと隙間ができてきたのわかるか? もう一本増やすぞ」 「んっ、うん……ぁぁあっ、ひゃん、そこ、なに? なにしてるの?」 「ここな。気持ちいいか?」 「(くすぐ)ったいけど、あっ、うん、そんな風にしてくれたら気持ちイ、かも……」

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