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第1話 全部キミのせい。
(この物語は本編「雨の日中に星空の下で。」と「雨上がりの更衣室」の間に入れたいお話です。)
俺が『笹倉 叶』を知ったのは義弟の亮がガッコで問題を起こしたからだった。
イチバン最初に気になったのは『笹倉』という名前だ。
確か親父の会社の名前が『笹倉グループ』だったから。
それに、亮が行ってたガッコには、なぁんでか……あんなスゴい会社『笹倉グループ』の御曹子が通ってるって知ってる奴は知ってた。
それはまわりの誰もがなんで?って思ってたし、正直俺も不思議に思ってた。
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その日も夜までいつのように俺は実の母親の小雪さんのもとで茶道の修行して、今お世話になっちゃってる『自宅』に帰ってきたら、義母さんが亮の部屋の前で泣き崩れてた。
「あれ……義母さん、どした?」
義母さんは涙でグシャグシャの顔で俺を見上げる。
「………亮が……学校で問題を……」
……義母さんはもう混乱してるみたいで、全く話のイミが分かんなかった。
(………亮が何かされたのか?)
俺は心配になって、亮の部屋のドアを叩いた。
「亮、ガッコで何かあったのか?!」
……なんも返事もなかった。
それが俺にとってスゴく心配になったから更にドアを叩いた。
「亮?!何か返事しろ!!俺が聞いてやるから……な?」
亮は俺がこの家に養子に入ってきて、すぐなついてくれた可愛い義弟。
……例え母親が違くても大事な義弟だ。
「兄ちゃんにも話せないのか……?」
俺はドアノブをガチャガチャと回した。
「……兄貴には関係ないし?」
やっと返事があったから、チョット安心した……まさかバカなマネしてたらどーしよと…俺はそればっかし思ってたから。
「関係なくないだろ?俺は亮の兄ちゃんだからちょー心配なんだよ。ドア開けて話そ?」
「……やだ。兄貴と話すのもやだ俺」
こんな駄々を捏ねる亮は初めてで、義母さんにもう一回亮のことを聞いても、狂ったように泣喚いていた。
(なんか………おかしい?のか)
「亮、そっからでいいから話してくれよ!」
……その言葉には反応がなかった。
「亮、話さねーとドアぶっ壊してでも入るぞ!!」
「何でもないよ!!ただ………ムカつく野郎がいたから、虐めてやったら……ちょっと問題になっただけだよ!!」
…………亮が虐めをしてた?!
………その言葉に俺はボーゼンとした。
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ある日『笹倉 叶』という野郎の転校先の私立中学のガッコの文化祭に偵察に行き、俺はその場でスッゴく後悔した。
(あーあ………俺、なーにしちゃってたんだろ)
『笹倉 叶』を直接見てから、俺は亮の言葉を真に受けた自分に腹がたった。
『笹倉 叶』を直接見てから、亮がどんな気持ちで虐めをしてたワケが分かった。
…『笹倉 叶』は男だけどさ、……あーんなに綺麗で可愛い子だったら、誰だってちょっかいだしたくなるよね。
俺だって亮のことがなかったら声かけたいもん。
(………でも気になるんだよね)
あの『作り笑顔』の正体が俺は気になった。
俺は小雪さんに『茶人』として小さいときから『場の空気を読む』ことを教えられてきたおかげで、結構人の表情が分かるほうだと思う。
『笹倉 叶』のまわりは奴の綺麗で可愛い笑顔に騙されてるけど、あれ……本性じゃない。
だから俺は調べまくった。
とりあえずは『笹倉グループ』の衣服ブランド支社長やってる、あんまし好きじゃない親父にまで頼んで、『笹倉 叶』がどんな子なのか。
でも……あーんなドでかい世界の『笹倉グループ』の御曹子がどんな子なのか、ただの支社長の息子が分かるはずもない。
分かるのは、あの綺麗な金髪に……おっきいビー玉みたいな綺麗な目ぇした、男なのにカワイコチャンなだけの容姿しかわかんなかった。
何にも知らないで、あんな綺麗なモノ壊そうとしてた。
(……痛い思いまでしてケンカばっかして………夜遊びして………強くなった気になってたけど、ただサイアクな人間になっちゃっただけだな、俺)
今更悔いても仕方ないし、俺は全てにおいての抵抗を辞めた。
『笹倉 叶』とは住む世界が違うんだなぁ……。
そう思ってた。
真面目に人生歩くかなー………と思ってたら、4月あの『笹倉 叶』がウチのガッコに進学してきて、俺の禁断の叶わぬ同性相手の片想いが始まった。
…………はずだった。
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「杉原先輩?」
叶の可愛い声に俺は起こされた。
「ん……なぁに?」
「起きてください、そろそろ文化祭終わります」
叶は優しく俺を起こしてくれた。
叶が見た目より中身が可愛いって知ってるの俺だけだといいなー、なんて俺は今ホントに叶に夢中だ。
それにしても………まさか、あの『笹倉 叶』がこーんな俺になついてくれるなんて思わなかったなー。
わかってたら、俺から早く声かければ良かったとか、本気で思っちゃってるし。
(………すっかり溺れちゃったなぁ、俺)
この俺が、男の叶に『泣きながら愛の告白』するときがくるなんて思ってもみなかったー。
我ながら驚いてるし、泣くなんて情けないと思うけどね。
しかもちょー嬉しいことに、叶のイチバン最初の『特別』をもらっちゃったわけだし!
『……せん…ぱい?』
『とりあえず…期待させたお詫びに、キスさせてもらおうかな?』
俺はさっき俺からのありったけ濃厚なキスをしたときの叶のちょー可愛い、とろりと蕩けた甘い表情に、
『俺は本気だからね?』
と、言ってから……
『覚悟してて?』
なんて今までないくらい俺は真剣になってた。
こんな俺は俺自身にこんな一面があるなんて今までにマジ知らなかったな。
(……愛って恐っろしいーわー)
(亮、悪いけど………叶は俺が貰うから)
俺に『笹倉 叶』の存在を教えてくれたことには感謝だけどねぇ?
完
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