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第2話 キミの『特権』は俺。

(このお話は本編「雨を願うてるてる坊主。」中の杉原 俊目線のお話です。) 叶を知ってから、俺の世界は変わった。  叶が俺を知ってくれて、話しかけてくれて、笑ってくれてから、俺の色褪せた世界が鮮やかになった。 (人を本気で好きになるってだけで、自分の世界がこーんなにも変わるんだなぁ)  今俺は視聴覚室で補習を受けていた。  ………このガッコでは俺は結構落ちこぼれで、でも喧嘩ばかりしてたときも勉強はしてたんだよ、これでもね。  一応有名な名門なガッコに父親が受験させてくれたし、小雪さんの面子も潰したくないし!!  それでも今補習が必要なのは、俺が三年になってからの出席日数のせい。  三年になってから喧嘩はやめてたし、煙草も禁煙中!  でも喧嘩売りまくってたせいで、今年に入ってから売られまくってた。  俺にはもう喧嘩を売買する理由も無いから、払ってたらボコボコにされて、歩くことも出来なくてガッコ休んじゃってた。  最近夏休み後半辺りから治まってきて……今じゃまたフツーのイケメン……ちょーイケメンに戻ってくれて内心嬉しい。  だってねー、だぁぁぁぁい好きな子……叶を口説くのに自分のベストな面で挑みたいじゃん!!  でも、最近思う。  このまま留年して叶ともう一年過ごしてもいいんじゃないかなってさ。  だってね、最近毎日キスしてんのに……叶は全然俺の気持ちに気付いていないから。  ここまでしたらさ、フツーなら『杉原先輩は自分が好きなのかも』とか思わないかな?!  最近ようやくホントに喜怒哀楽が出てきたけど……俺はぜーんぜん満足しないんだよね!  あぁ……俺がまさかホントに本気で恋愛しちゃってる。  片思いってこんなにも辛いのね………鈴木以外の女の子達に、謝りたいわぁ……今更だけど。 (小雪さんはこんな思いで、『あの人』と俺を作ったのかな)  俺は父親に恨みはないけどさ、好きになれない。  小雪さんがホントに好きなら……二人して逃げちゃえば良かったのに。  そしたら叶は………亮から虐めを受けないで、過ごせたはず。  あぁ……でもそしたら亮が生まれてこなくなっちゃうからダメなのか?!  俺が机に突っ伏してヴーーーー………と唸ってたら俺の観督役のセンセーが 「一応杉原でも難しくないプリントなんだが……難しいか?」  と聞いてきたので 「センセー、俺分かんないこと沢山あるよ……」  叶のホントの気持ちとかね………。  あの綺麗で可愛い子の内心は俺にはさっぱり分かんないまんま。 (『場の空気を読む』ことを学ぶのも難しいのに『内心』なんて読めないしねぇ………)  心を奪われる身が辛い……あぁ辛い……!! _____  明日から文化祭だし、ガッコの中はいつもより五月蝿い。  俺も五月蝿い方だから、俺には五月蝿いって言われたら回りはちょー腹立つんだと思うけど、そんくらい五月蝿いし。  でもお祭りだから仕方ないのかなー? (文化祭なんて面倒なだけだろー……)  ぶっちゃけクラスの奴等から頭下げられなかったら、俺は卓球部に籠るつもりだったし。  多分俺がそんな思いだと誰も思わないんじゃないかな………。  これなら居辛い本家で茶立ててたほうがマシだよね。  最近叶と昼飯食べてたから、昼休み楽しいけど………これはホントに拷問。  あぁ……叶、今日一緒に昼休み居らんなくてゴメンね、など勝手に自分で言い聞かせながら視聴覚室でモソリとパンをかじった。  ……ふと窓から外を見たら、晴れてた。  叶……晴れてるから、今日刺激欲しいよね……。  もし、叶が俺以外の奴から刺激もらっちゃってたら、ヤだな。  そんなの俺が思っちゃったらダメだよなー。  俺かなーり汚れてんもん。  背中の引っ掻きキズが出来た理由なんて、叶みたいな純粋なオトコの子じゃ分かんないだろうな。  きっと文化祭で叶は忙しいんだろうなー。  会えないよなー多分……俺も忙しーし。 (………せめて、今は早く補習終わらして叶とキスすることだけに集中しよう)  と俺は直ぐそばの出来る邪な欲望のために頑張ることにした。  じゃないと補習なんてヤル気出ないしねぇ? (自由参加の前夜祭に叶が参加する可能性は少ないから、早く終わらして見付けないと、今日叶と激しいキスできなくなっちゃうよ)  こうして杉原先輩は補習にようやくヤル気が出るのであった。 _____  ようやく俺は補習を終えて、真っ直ぐ職員玄関に向かった。  真面目な叶のことだから、門からガッコを出る。  でも、自由参加でも昇降口から正門へ叶が出てくることは出来ないだろう、そう判断したから。  そう思った良かったのに俺の予想は的中したみたいで…くくくっ……ここまで分かりやすい性格だと思わなかったよ。 『やっぱり帰ると思ってた』  叶は一瞬驚いた顔をしたけど、俺だと分かると直ぐに安心しきったのか安堵の表情。  こういう表情は、ホーント可愛いなって思う。 『まぁ、自由参加だけど。帰ったって文句は言えないから、堂々と正門から帰ればいーのにね』  あ……この顔は心配してた顔付き。  だよね、いつも最近嫌と思われそうなほど付きまとってたわけだし、そんなヤツがいきなし現れなくなったらちょっとは心配してくれるよね?  少しはうぬぼれても良いよね、俺? 『先輩は何故ここにいるんですか?』 『ん?叶を探してたから』 『どうしてですか?』  そんなの当たり前デショ! 『口が淋しいからだよ!』  約束だもんね? 『晴れていたしすごいのヤりたいんじゃないの?特に叶は……ね』  叶もしたいかもしんないけど……俺はウソつき。  叶とキスがしたいの。  本音を言うとね……もっと色々叶とイケナイコトしたい。  ……それは今は置いといて……!!    この刺激的な行為は、どうか俺だけにしてよね……叶。  杉原先輩と叶だけの特別な特権だよね?  二人だけの特別な『秘密』……だよね? 完

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