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第6話

自宅に戻って一通り泣いたおれは、自業自得だと自分に言い聞かせ、泣き腫らした目を冷やしていた。おれが寝転がるベッドへ腰掛けて、凌平はずっと頭を抱えている。 「まさか自分が持て余した性欲の捌け口になってたとはね。ほんと笑っちゃう」 「…やめろ」 「それにしても雅紀さんの子ども可愛かったなー。きっと奥さんも美人なんだろうなー」 「……」 「娘さんはユズって言ってたけど、息子の名前なんて言うんだろう。聞きそびれちゃったなー。この際だから聞いときゃよかったかな。惜しいことしたなー」 「…聞いてどうする?」 「犬か猫飼って、それに名付ける。忘れないように大事にする。忘れて溜まるもんか。……、嘘だったかもしれないけど、少しの間だったけど、……でも、楽しかったんだ。…幸せ、だったんだ」 あぁ、やっぱダメだ。泣いても泣いても、涙って枯れないんだな…なんて、くだらないことを思いながら、また涙が溢れ出てくる。 「……凌平、……しようよ」 ゴン!と強い痛みが頭に走る。一瞬何が起きたかわからなかった。衝撃のせいで、それまでの涙が嘘のようにピタリと止まる。 「おまえはバカか。反省しろ。おれは流されねえからな。いつもいつもすぐ目を離した隙にふらふらしやがって…。心配かけるなっていつも言ってんだろ。これじゃあ寿命がいくらあっても足りねえよ。もう嫌なんだよ。泣いてる姿見んのも弱ってる姿見んのも…」 「……そんなこと言われても」 「だから、もうどこにも行くな。…おれのそばにいてくれ」 突然の告白に感動、、、…するはずだった。 「はは!!ははは!!!びっくりしたー!!!」 「なんだよ、人がせっかく真剣に…」 「だからいつも言ってんじゃん!おれ、凌平のこと、この世で一番嫌いなんだって。だから大丈夫。安心していいよ。もうこれ以上嫌いになることなんてないんだから!」 「…おまえ相変わらず俺のこと好きだな」 「違う違う。嫌いなの!…わかった?凌平!」 「はいはい、わかりました」 凌平といると、何故だかいつも安心するんだ。安堵したせいか上瞼が弛んできた。頭を撫でる優しい手は、いつだっておれに安心感を与えてくれる。 おやすみ、凌平…。心の中で呟いて、そっと瞼を閉じた。

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