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第80話◇
【side*玲央】
もうすぐ着く、と連絡が来て、改札に向かう。
もう優月が、改札の外に立っていた。なんだか少し、気持ちが、浮つく。
「優月」
近付きながら、名を呼ぶと。
「玲央…」
すごく嬉しそうに、ふわりと笑う。
……目立たないとか。素通りするとか。言ってたけど。
今となってはなんだかもう――――……そんな訳ない、気がする。
人が大勢いる中でも、見つけられてしまいそうな、気がする。
……可愛くてたまんねえのって……何でだ?
勝手に動いた手が、優月の頭を撫でていた。
撫でると、また嬉しそうに、微笑む。
「……早く、いこうぜ」
何でこんな、可愛いと思うかな……。触りたくてしょうがない。
優月の背に手を置いて、歩き出す。
途中で一瞬、優月が歩くのを止めたというのか、緩めたというのか。何だかあらぬ方を向いていて。
「……優月?」
聞くと、ん?と逆に不思議そうな顔で振り返ったのが可愛くて。つい、笑んでしまう自分に気づいては、いる。
見つめあうと、少しして、ふ、と視線を逸らされる。
照れてるんだろうなと思うしかない仕草なので、逸らされても、可愛い。
「可愛い」が、自分の中に積もってく気がして、戸惑う。
何でこんなに、可愛いんだろう。
普通に男だし。背も別に小さいとか、めちゃくちゃ華奢だとか、そんなんではないし。……ぱっと見は、やっぱり普通だし。
「――――……」
マンションについてエレベーターに2人になる。
口元少し笑んだまま、優月が見上げてくる。
やっぱ――――…無邪気。
同じ年でも、表情はすごく、子供っぽい。
でも――――……。
「――――……」
そっと、頬に触れて、なぞると。ぴく、と肩が揺れる。
ここで触んないでみたいな顔して、少し退いていく。
普段こんな顔してるくせに、 触れるとすぐエロい顔をする。
赤くなって、涙ぐんで、すぐ息があがって。
ぞく、と背筋を走る、感覚。
――――……やば。
玄関を開けて、優月が靴を脱いで、荷物を下に置いた。
首筋が、やたら綺麗に見えて。
――――……ダメだ。
顔を上げた優月の頬に触れて、口づけた。
「……ん……?」
不思議そうな声。
……やっと、触れた気がする。
深くキスしながら、優月の背を壁に押し付ける。
逃げられないように。
「――――……れ お……」
名を呼ばれて、少しだけ唇を離す。
少しの間、見つめあう。
ふ、と瞬きをして、潤む。 浮かされたみたいに。
「……優月」
「――――……」
唇を深く重ねて、好きに、舌を絡める。
昨日から、何回、こんなキスしたかな。
――――……普段ここまで、キスしねーのに。
「……ん、ン……――――……は……っ」
漏れる声が可愛いから。
――――……声、出させるためにキスしてる気もする。
しがみついてくる、優月の脚を割らせて脚を入れる。
崩れそうな体を支えようとしたのだけれど、もう反応してるのが分かって。刺激したら、唇が離されて、顎が上向いた。びっくりしたみたいな顔。
昨日、初めて色々したけど――――……まだ全然慣れてないだろうし、少し、勢いを緩めないととは、思う。
「――――……優月……」
「……っ……」
思いは、するのだけれど――――……。
「……もっとキスして……お前に触って、いい?」
「――――……っ……」
……ダメだな、もう、早く触りたい。
自分の声が――――…興奮して、少し上がってるのが分かる。
「……嫌なんて……言うわけ、ない……」
赤くなってるくせに、返ってきたのは、そんな言葉。
「――――……ほんと、お前……」
――――…すげえ可愛いし。
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