80 / 856

第80話◇

【side*玲央】  もうすぐ着く、と連絡が来て、改札に向かう。  もう優月が、改札の外に立っていた。なんだか少し、気持ちが、浮つく。 「優月」  近付きながら、名を呼ぶと。 「玲央…」  すごく嬉しそうに、ふわりと笑う。  ……目立たないとか。素通りするとか。言ってたけど。  今となってはなんだかもう――――……そんな訳ない、気がする。  人が大勢いる中でも、見つけられてしまいそうな、気がする。  ……可愛くてたまんねえのって……何でだ?  勝手に動いた手が、優月の頭を撫でていた。  撫でると、また嬉しそうに、微笑む。 「……早く、いこうぜ」  何でこんな、可愛いと思うかな……。触りたくてしょうがない。  優月の背に手を置いて、歩き出す。  途中で一瞬、優月が歩くのを止めたというのか、緩めたというのか。何だかあらぬ方を向いていて。   「……優月?」  聞くと、ん?と逆に不思議そうな顔で振り返ったのが可愛くて。つい、笑んでしまう自分に気づいては、いる。  見つめあうと、少しして、ふ、と視線を逸らされる。  照れてるんだろうなと思うしかない仕草なので、逸らされても、可愛い。  「可愛い」が、自分の中に積もってく気がして、戸惑う。  何でこんなに、可愛いんだろう。  普通に男だし。背も別に小さいとか、めちゃくちゃ華奢だとか、そんなんではないし。……ぱっと見は、やっぱり普通だし。 「――――……」  マンションについてエレベーターに2人になる。  口元少し笑んだまま、優月が見上げてくる。  やっぱ――――…無邪気。  同じ年でも、表情はすごく、子供っぽい。  でも――――……。 「――――……」  そっと、頬に触れて、なぞると。ぴく、と肩が揺れる。  ここで触んないでみたいな顔して、少し退いていく。  普段こんな顔してるくせに、 触れるとすぐエロい顔をする。  赤くなって、涙ぐんで、すぐ息があがって。  ぞく、と背筋を走る、感覚。  ――――……やば。   玄関を開けて、優月が靴を脱いで、荷物を下に置いた。  首筋が、やたら綺麗に見えて。    ――――……ダメだ。  顔を上げた優月の頬に触れて、口づけた。 「……ん……?」  不思議そうな声。  ……やっと、触れた気がする。  深くキスしながら、優月の背を壁に押し付ける。  逃げられないように。 「――――……れ お……」  名を呼ばれて、少しだけ唇を離す。  少しの間、見つめあう。  ふ、と瞬きをして、潤む。 浮かされたみたいに。 「……優月」 「――――……」  唇を深く重ねて、好きに、舌を絡める。  昨日から、何回、こんなキスしたかな。  ――――……普段ここまで、キスしねーのに。 「……ん、ン……――――……は……っ」  漏れる声が可愛いから。  ――――……声、出させるためにキスしてる気もする。  しがみついてくる、優月の脚を割らせて脚を入れる。  崩れそうな体を支えようとしたのだけれど、もう反応してるのが分かって。刺激したら、唇が離されて、顎が上向いた。びっくりしたみたいな顔。  昨日、初めて色々したけど――――……まだ全然慣れてないだろうし、少し、勢いを緩めないととは、思う。 「――――……優月……」 「……っ……」  思いは、するのだけれど――――……。 「……もっとキスして……お前に触って、いい?」 「――――……っ……」  ……ダメだな、もう、早く触りたい。  自分の声が――――…興奮して、少し上がってるのが分かる。 「……嫌なんて……言うわけ、ない……」  赤くなってるくせに、返ってきたのは、そんな言葉。 「――――……ほんと、お前……」  ――――…すげえ可愛いし。

ともだちにシェアしよう!