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第98話◇
食事を終えた時に、スマホが小さく震えたのでポケットから取り出した。
『玲央、今どこ?』
勇紀からそんなメッセージが入っていた。
「裏のカフェに来てる」
『じゃあ部室には来ない?』
「昼は行かない。4限の後、行く」
『今日、17時からラストまで、場所は第1で、予約取れてるから』
「OK」
そう返して ――――……何気なくスクロールして。
優月の所に、新着メッセージがある事に気付いた。
メッセージが来てるのは、2限が終わった時間。気づかなかった。開いてみると。
『玲央が買ってくれた洋服、友達に似合うっていっぱい褒められたよ。イイ感じって。ありがとね』
そんなメッセージと、ありがとうと揺れてる猫のスタンプ。
『なんのお礼すればいいか、考えといてね』
――――……なんだかな……。
……ほんわかしすぎな、メッセージ。
……あー。なんか……。
イライラしてたのは、急激に、引いた、のだけれど。
違う感情が、急に沸く。
……優月に、触りたい。
そんな風に思っていた時。
目の前で由香が自分のスマホを見て、ちょっと眉を顰めた。
「……どうした?」
「あの……ごめんね、玲央、ノート借りてた子に呼び出されちゃた」
「あぁ」
「3限の前に返してって言うから、あたし、行かないと」
「ああ。オレ、コーヒー飲んでから行くから。先行っていいよ」
伝票を自分の方に引き寄せながらそう言うと。
「ありがと、玲央。ごちそうさま」
立ち上がった由香が、きょろ、と周りを見て、頬にキスしてきた。
「連絡待ってるね?」
「……ああ」
急いで立ち去っていく姿を何となく見送って。
スマホに視線を落とす。
「――――……」
……なんか……。
――――……ほんとによく分かんねえけど。
……オレが今、一緒に居たいのは
――――……優月なんだと思う。
別に、他の奴が嫌になったとかじゃなくて。
ただ……他の奴と居ても、思い出してしまう。
優月の画面を開いて、メッセージを送る。
「優月、3限、必修か? 必修じゃないなら、サボれる?」
数秒して、既読が付く。
『一般教養だから……1回くらいサボっても大丈夫だけど……何で?』
そう返事が入ってくる。
「今お前どこに居る?」
『クロとご飯、食べ終わったとこ』
その返事に、ふ、と笑ってしまう。
「とりあえず、そこに行っていい?」
すぐに既読がつくけれど――――……返事が少しの間来ない。
待っていると。
『うん』
それだけ入ってきた。
立ち上がって、会計を済ませると、優月の居る場所に向かった。
恋人とか……。
男同士で、どうかと思う。
ただでさえ、恋人なんて要らないと、自ら決めて、生きてきたのに、
しかも、当人が、恋人なんか無理で、セフレが良いって、言ってるのに。
何だかもう、考えはまとまらねえし、
全然分からないけど。
会いたくて、足早に歩いてしまうのが、全て、な気がする。
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