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第172話◇
玲央は、何だか、噛んでるのかなと心配になるような食べ方で、サンドイッチを食べてて 何を思ってるのかな?と見つめてみる。
……改めて見てみると。
もう、ほんとに、見惚れる位、完璧にカッコいいなと、思ってしまう。
こんな人が、ステージで歌ってたら。
ほんと、キラキラしてるんだろうなあ……。
あ、明日見れる事になったんだ。
すごく、楽しみ。
玲央は、じっと見つめてるオレを見つめ返して、ふ、と微笑んだ。
食事を取り終えて出ようとしたら。また玲央がものすごく自然に会計を済ませようとするし。
――――……これも。 正直、どうしたらいいのか、分かんなくて。
玲央の家がどんなに大金持ちか知らないし、ランチのお金位出したって痛くもかゆくもなかったとしても。ずっと出してもらうって、いいのかなって思ってしまう。
良いって言うんだろうけど。
……多分、玲央は、今まで付き合ってる人達にそうやってきたんだろうけど。だってあまりに自然すぎるし、当然みたいな顔してるから。
全部奢ってもらうって……いいのかなあ。と、回数が増えるにつれて、気になってきた。
恋人同士の女の子にお金払わせる気はないっていうような、男の人のポリシーで、デートの費用は全部出すからね、て話なら、全然、その女の子は甘えて良いと思うんだけど……。
オレ男だし。玲央に全部出してもらう理由なんて、ある??
…………うーーん??
もうほんとに、全然分からないよー。
もう、そこは後で、美咲達に聞いてみよ。
色々考えながらコンビニに行ったら、おばちゃん達が玲央を見てすごく喜んでて。玲央と入った瞬間、2人の顔がきらーん、と笑顔になったのが可笑しかった。
コンビニを出て、玲央がおじいちゃんに似てる、なんて話になったら、玲央がおじいちゃんになるのを見れる訳はないしなー、とふと思ってしまって。
そんなの当たり前じゃん、と瞬間的にすぐ思ったんだけど。
……ていうか、何、オレ、おじいちゃんになった玲央の側にも居たいの?
と、自分で自分に呆れた瞬間。
鋭い玲央に、のぞき込まれてしまった。
いやいや、こんなの、絶対、言えない……。
もう最大限、必死に笑顔で、乗り切ったつもりだけど。
何だかまだ首を傾げていた玲央のスマホがちょうどよく震えてくれて、助かった。
て、思ったら。
――――……何だか玲央、スマホを見てから、足を止めてしまった。
一歩先の位置で、止まった玲央を振り返ったけど、全然動いてくれない。
「……玲央?」
呼んでも、何だか固まってる。
玲央の側に戻って、「玲央??」とのぞき込んだら。
「――――……っ」
玲央が、すごくびっくりしたような顔をして。
一瞬、赤くなった、ようにも見えて。
え? と、思った瞬間。
ぎゅ、と肩を抱かれてしまった。
「え?」
なんだか玲央の顔が、全然見れない。
何これ。
……ていうか、玲央、さっきの顔、何?
「……れお?」
この体勢は、顔見るなってこと??
「何か、あった?」
スマホを見てから、だよね?
そう思って、聞いたら。
「――――……優月。クロ、今度にしていい?」
「え?」
「……オレのマンションに行っていい?」
「……いま?」
やっと、少し手から力が抜けて。
玲央を見上げると。
もう赤いとかは、ないんだけど。
なんかすごく、熱っぽい、視線。
ドキッとして。
瞬きを、何回かしてから。
「うん」
頷くと、肩から玲央の手が離れて、そのまま、優しく背中に触れた。
――――……手、熱い。
ダメだ。なんか。
ドキドキして。……しすぎて。
眩暈が、しそう。
早く、着いて、ほしい。
玲央のマンションまで、5分の道のりがすごく長く感じた。
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