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第219話◇

【side*玲央】  どうすっかなー……。  何となく、ずっと考えてた。  ちょっと間が空いたライブだったからか、セフレの中でも、付き合いが長い奴は、ほとんど今日来てる。  それを確認してから、また色々考える。  ――――……ライブで、Loveの意味が分かると言ったのは、そういう意味も含ませて言った。いきなり言うよりも、聡い奴はそこらへんで気付いてくれると思って。その後、言いやすいとも、思ったから。  でも、あまりにはっきり言うのもなと、ぼやかしたからか、打ち上げが始まって近づいてくる奴らは、気にしてる風もなく、誘ってくる。  ……今後、オレが優月と付き合う、として。  隠し続けるなんて、不可能。  一緒に居る所も見られるだろうし、街を歩いてたって、オレの事を知ってる奴は結構居る。ずっと、隠れていくなんて、無理。  だから、優月と一緒に居る事は、隠さない。  でも、セフレと切ってない状態で、優月と付き合ってるなんて言ったら、優月に迷惑がかかるかも。恋人が出来たら終わり、とは言ってはあるけど、実際は、順番守ったほうが、スムーズな気がする。  と、したら――――……。  オレに、片思いの相手が居るって事にするのが良い気がする。  好きな奴ができて、迫りたいから、もうセフレはやめたい。その方が、きっと良い。  ……実際、片想いに近い気がするし。  優月はオレの事が好きだとは言うけど、セフレとか理解できない部分もあるし、割り切ろうとしてるところもあって、オレを完全に信じてはない。好き、一緒に居たいと伝えると嬉しそうだけど、それを全部本気にはしてくれていない。  誘うのも、一緒に居たがってるのも、全部オレから。  一番最初から、全部オレからだった。  優月はオレを好きだって言ってくれてるけど――――…… 多分優月なら誰とでも幸せになれると思う。  オレが手を離せばきっと、女の子と、普通の恋もできると思う。  優月と居るのを幸せだと思う子は、絶対居るだろうし。  ――――……でも。  できるなら、離したくない。  側に、居て欲しい。  オレの手で、幸せに、笑わせておきたい。  オレ1人で先走ると――――……失敗すると面倒な事になる気がする。 「――――……なあ。今ちょっと真面目な話、していいか?」  隣に居た勇紀に言う。 「んー、もちろん。それって皆で?」 「出来たら、皆で」  勇紀が、メンバーと、美奈子さんと里沙さんを呼んだ。  このメンバーで集まってる時は、さすがに誰も寄っては来ない。  何何?という、皆の顔を見ながら。 「悪い、打ち上げ入ってからで……あのさ。オレ本気で、セフレやめにしたい、んだけど。……とにかく優月に、迷惑が掛からない方法で終わらせたくて。どうすべきだと思う?」  最後まで言った瞬間、皆が一斉に苦笑い。 「なんだよ?」  首を傾げながらそう言うと。 「……なんか。変われば変わるっつーか」  甲斐が笑う。 「しかも優月に迷惑かからない方法って……そこが一番なんだと思うと、なんかおかしくて」  勇紀もクスクス笑う。 「からかってねーで話そうぜ」  自分も笑いながらも、颯也はそう言う。 「んー、つか……そのままほっといて、誘われたら断るっつーんじゃダメなのか?」  甲斐の言葉に、オレは首を振った。 「それだと、優月がいつまでたっても、信じないから、無理」 「――――……」  また苦笑いの全員を、視線で流す。  颯也がオレをまっすぐに見た。 「別に一晩限りの奴にまで連絡する必要はないだろ? そこらへんは、お前が、恋人が出来たって話でも流せばいいし」 「それはじゃあこっちでやるわよ。SNS使ってさりげなく、情報流す」  美奈子さんが言って、里沙さんも頷く。 「恋人っていうか…… オレが片思い中、みたいにできますか?」 「――――……恋人、じゃなくて? 片思い?」 「オレが勝手に片思いしてて、これから迫るからって方が良いかと。実際そんなようなもんだし」 「――――……オッケイ。じゃあそれで上手く流すわ」 「今日1人女友達で、結構発信力ある子が来てて。……オレからそっちにも頼んでみてもいいですか?」 「うまくできる子ならOK」  多分、と頷いた。 「――――……付き合い長い奴は、今日ほとんど来てんの?」  勇紀の問いに、来てる、と答えると。 「ライブでLoveの意味が分かるとか言ってたし、Stay歌ったし。分かる奴は分かってるかもしんないけど……でもな」  颯也がそう言うと、甲斐が頷いて続けた。 「長い奴は、直接、好きな奴が出来たって送るのが一番なんじゃねえの? だって、そういう約束で関係もってんだろ?」 「だよね。宣言してる奴には送った方がいいよ」  勇紀も頷いてる。 「分かった。じゃあそーする。――――……てことで、オレこれからは、好きな奴が居るっつーことでいくから、よろしく」  そう言うと。  皆、ぷ、と笑って。 「ほんと、玲央じゃないみたい。片想いとか言っちゃってるし」 「ほんとに玲央なの? 中身違うんじゃねえ?」 「1週間で別人だよな……」 「あら、私は前の玲央がああだったからこそ、超萌えるけど」 「私もー! しかも会って1週間でとか。ドラマみたいよねえ?」  勇紀と甲斐と颯也。プラス。美奈子さんと里沙さん。  皆苦笑いだったり、クスクス笑いだったり。  とりあえず、全員スルーして、オレは息を付いて、顔をあげた。  もう、なんと言われようと、優月が不安に思う事は、無くしたい。  しかも、なるべく、早く。  素直に、まっすぐ、信じてもらえるように。

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