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第295話◇

「ありがと、智也」  ふ、と笑いながら智也を見上げていると。  智也は、ん、と頷いた。  それから、あーでもなあ、と苦笑い。 「美咲は、まだ会ってないだろ、神月」 「んー。そういえばなんか先週は、美咲とはあんまり会わなかったかなぁ。お昼に喋った時位だったかも。美咲、心配してる?」 「んー。……まあ、やっぱり、ちょっとしてるかな。見守るとか言ってたけどさ、優月といるとこ見てないし、心配なんじゃねえかな」  クスクス笑いながら智也が言う。  ふ、と笑いながら、そだよね、と頷いてしまう。  早く可愛い彼女紹介してね、とか。  美咲がたまに言ってた言葉が、浮かんでくる。  可愛い彼女、じゃなくて、  カッコイイ彼氏、になっちゃったしなあ。  やっぱり、心配、されちゃうのかもな。  ――――……まあ。  オレだって今も、男同士でとかは、不思議な位だから。  しかも、あんなにカッコ良すぎる、なんだか別世界の人とだし。  ゆっくり分かってもらえばいいのかなあ。  なんて思いながら、食堂に入り、美咲を探す。 「どこだろ、美咲……奥の方かな」  言って智也を振り返ったその時。  「優月、智也ー」  奥の方で、美咲が手を振ってる。  あ、居た。  すぐ近づいて行って、「おはよ、美咲」と笑いかけると、「おはよ」とすぐ返ってきたのだけれど。そのまま、じーーっと見つめられる。 「美咲?」  どうしたの?と笑顔で見つめ返すと。  少しして美咲は、ぷ、と笑って、良かった、と言った。 「良かったって?」 「――――……週末、なんかちょっと心配になっちゃったの。ほんとにいいのかなあとか。大丈夫なのかなあとかさ。でもなんか、今見たら、優月が超笑顔だから」 「――――……」 「なんか、大丈夫なのかなって、思ったから。 もういいや」  そんな事を言って、美咲は立ち上がった。 「とりあえずごはん買いに行こ。週末も色々あったんでしょ? 話は食べながらしよ」  今日の美咲は、横の髪を後ろにクルクル巻いてとめてる。耳が出てるから、ピアスの青い石がキラキラ光ってて、とっても綺麗。  もう安心した、とか言いながら、キラキラ笑顔の美咲に、横に居た智也と顔を見合わせて、ふ、と笑ってしまった。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「てことは、もう神月玲央にセフレ居ないの?」  セフレの所だけ超小さく言って、美咲がオレを見つめる。 「うん。連絡して、やりとりしてくれたみたい」 「皆納得したの?」 「それは……どうだろ。本気で玲央を好きな子は、まだ諦めてない、かもだし…… それは分かんないけど」 「――――……でも神月玲央にはもう、その気はないってこと?」 「……ないと思う」  そっか、と美咲が頷く。  ごちそうさま、と手を合わせて、トレイを前から避ける。 「良かったね、優月」 「うん」 「それ、すっごく気になってたの、あたし」 「……うん」  まあ。そう、だよね。うん。 「んー、これで、優月の初恋人が、神月玲央かー……」 「うん。……彼女じゃなかったけど、ね」 「ん? ……あ。 あたしがずっと初彼女紹介してって言ってたから?」  クスクス笑う美咲。 「いいよ、優月が幸せならいいんだし」 「……ありがと」 「あ。そう言えば、蒼さんも神月玲央に会ったんでしょ?」 「うん」 「何て? 良いって?」  智也や美咲は、蒼くんがオレの学園祭とかに来た時に知り合ってるし、その後も何回か会ってる。  美咲は完全に、蒼くんのファンだったりする。 「蒼くんは――――……初恋、頑張れって」  そう言ったら、美咲と智也は顔を見合わせて、ふ、と笑った。 「良かったね。蒼さんに反対されたら、ちょっときつかったでしょ?」  美咲のセリフに、うん、と頷く。 「それはほんとに良かった。 なんか蒼くん、玲央にちょっと優しいんだよ。あいつはこう言うだろ、とか言っちゃうし。 不思議」 「でも蒼さんが言うのはあたってんだろ?」 「そーなんだよねえ。ほんとに不思議で」  頷きながらそう言うと、2人は面白そうに笑う。 「ねえ、優月? 神月玲央って、蒼さんにヤキモチ妬かないの?」  すごく楽しそうにそう言われて。  美咲が、最初に突っ込むのがそこなんだなあ、と思うと。  なんか面白いけど。     

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