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第294話◇

【side*優月】  お昼、智也と歩いていたら、玲央に会えた。朝以来ほんの数時間ぶりなのに、玲央の姿を見つけた瞬間心がすっごい弾んだ。呼びかけたら、めちゃくちゃ優しく見つめられて。  お昼の学校で、ものすごいドキドキに襲われた。  玲央の友達の西野くんが何だか騒いでるのが面白くて。  ――――……ああ、きっと話したんだろうなあと分かって、嬉しくて。  玲央の中身が宇宙人だって。それでも仲良くしてあげてねとか言ってて。  何それ。面白いなあなんて笑ってたら急に玲央に抱き締められてしまった。  智也の前でとかは、さすがに、ちょっと恥ずかしいけど。  でもきっと、いつもの玲央だと、キスしたりしてきそうな所だから、一応抑えてくれたのかなあと思ったりもした。  ここ最近、毎日毎日、居られる限りずっと一緒に居るような気がするのに、少し会えただけでこんなに嬉しくて、ほんとに、不思議すぎ。  また、迎えに行くとか言ってくれて。  断ったら、西野くんがまた大騒ぎを始めた。  なんだかんだ、周りから見てめちゃくちゃ騒がしかったと思うけど、ちょっと楽しい空間で。  玲央と会って、こんな風になってなかったら、西野くんとも話してないし。  こんな風に大騒ぎしてたりもしてないし。  玲央とオレが一緒に居る事で、広がってく関係とか。  これからも、いっぱい広がっていったら、いいなあ……なんて。  ちょっと思いながら、玲央と別れた。  少し離れてから振り返ると、まだこっちを見送っててくれたから、嬉しくなって、もう一度手を振って別れた。 「……なんかさ」  手を振り終えたオレを見て、智也がクスクス笑う。 「超仲良し、な? 神月と」 「……そう見えた?」 「見えたよ」  智也の即答。 「なら嬉しいな。――――……うん、仲良し、だと思う」  すごく、不思議ではあるけど。  ――――……でも、仲良し、だよね。玲央と、オレ。  ふ、と笑んで智也を見上げると、あーでも、と、苦笑い。 「神月ってさ、優月の前だといつもあんななの?」 「あんなって?」 「んー……そうだなあ…… あ。溺愛モード、て感じ?」 「…………」  えーと。 溺愛モード……?  ――――……うーん……。  その言葉はちょっと……いや、すごく恥ずかしいけど。でも。 「いつも、オレだけの時は――――……もっとかも」 「もっとなの?」  ひえー、と声を出しながら、智也が笑う。 「ん……なんか、ついてけない位、優しいかも」 「へーー……」  ちょっとびっくりした顔をしながら、智也がオレを見る。 「じゃああれって、外だからって、多少手加減はしてんの?」 「……多分」 「じゃあもう、2人ん時は、もっと甘々なのか」  智也、面白そうに笑ってる。  ……甘々、って言う言葉も、恥ずかしいな…………。  と、頷けないで居ると、智也は笑いながら話を続ける。 「西野みたいにさ、昔から知ってる訳じゃないからあそこまでは言わないけど……去年ゼミとかで見てた神月とは、別人に見える」 「智也から見てもそうなんだね」 「うん。ほんと、冷めてるイメージがあったからさ。今は全然違う。血が通ったみたいなイメージ」 「去年の玲央は血が通ってないイメージだったの?」 「うん。ほんと。冷めてる感じ。 なんかオレはそれ以外では、神月の事を表現できないかも」  ふーん、そうなんだ……と、冷めた感じの玲央を思い浮かべる。    ……うーん…………?  ……なんか、それはそれで。  ものすごく、カッコイイかもしれない。 「なんでそこで、にっこりすんの、優月」  智也にクスクス笑われて突っ込まれる。   「……あ、なんか。冷めてる玲央もカッコいいだろうなあって思っちゃって」 「――――……」  ぷ、と笑って、智也がオレを見つめてくる。  ちょっと恥ずかしくなってきて、頬に触れると、また熱くなってるし。 「ごめん、なんか咄嗟に……」 「別にいーけど。 優月、幸せそうだから」 「――――……昨日から、なんかオレやばいの、浮かれてて。 なんか、足元浮いてるみたいな気がしてて……」  智也が優しく笑いながら聞いてくれてるので、そう言ってしまうと。 「優月が、恋愛にそんなにのめりこむとは思わなかったなー。しかも相手が神月とか、今でも嘘みたいだけど」 「……だよねぇ」 「……でも何回かオレ、優月と神月が一緒のとこ見てるからな」 「うん?」 「好き合ってんのは、分かってる、かも。 だから、結構、納得はしてる」  智也にそんな風に言われると。  またまたすごく、嬉しくなってしまう。  またふわふわ浮いてるみたいになっちゃいそう。

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