290 / 860
第294話◇
【side*優月】
お昼、智也と歩いていたら、玲央に会えた。朝以来ほんの数時間ぶりなのに、玲央の姿を見つけた瞬間心がすっごい弾んだ。呼びかけたら、めちゃくちゃ優しく見つめられて。
お昼の学校で、ものすごいドキドキに襲われた。
玲央の友達の西野くんが何だか騒いでるのが面白くて。
――――……ああ、きっと話したんだろうなあと分かって、嬉しくて。
玲央の中身が宇宙人だって。それでも仲良くしてあげてねとか言ってて。
何それ。面白いなあなんて笑ってたら急に玲央に抱き締められてしまった。
智也の前でとかは、さすがに、ちょっと恥ずかしいけど。
でもきっと、いつもの玲央だと、キスしたりしてきそうな所だから、一応抑えてくれたのかなあと思ったりもした。
ここ最近、毎日毎日、居られる限りずっと一緒に居るような気がするのに、少し会えただけでこんなに嬉しくて、ほんとに、不思議すぎ。
また、迎えに行くとか言ってくれて。
断ったら、西野くんがまた大騒ぎを始めた。
なんだかんだ、周りから見てめちゃくちゃ騒がしかったと思うけど、ちょっと楽しい空間で。
玲央と会って、こんな風になってなかったら、西野くんとも話してないし。
こんな風に大騒ぎしてたりもしてないし。
玲央とオレが一緒に居る事で、広がってく関係とか。
これからも、いっぱい広がっていったら、いいなあ……なんて。
ちょっと思いながら、玲央と別れた。
少し離れてから振り返ると、まだこっちを見送っててくれたから、嬉しくなって、もう一度手を振って別れた。
「……なんかさ」
手を振り終えたオレを見て、智也がクスクス笑う。
「超仲良し、な? 神月と」
「……そう見えた?」
「見えたよ」
智也の即答。
「なら嬉しいな。――――……うん、仲良し、だと思う」
すごく、不思議ではあるけど。
――――……でも、仲良し、だよね。玲央と、オレ。
ふ、と笑んで智也を見上げると、あーでも、と、苦笑い。
「神月ってさ、優月の前だといつもあんななの?」
「あんなって?」
「んー……そうだなあ…… あ。溺愛モード、て感じ?」
「…………」
えーと。 溺愛モード……?
――――……うーん……。
その言葉はちょっと……いや、すごく恥ずかしいけど。でも。
「いつも、オレだけの時は――――……もっとかも」
「もっとなの?」
ひえー、と声を出しながら、智也が笑う。
「ん……なんか、ついてけない位、優しいかも」
「へーー……」
ちょっとびっくりした顔をしながら、智也がオレを見る。
「じゃああれって、外だからって、多少手加減はしてんの?」
「……多分」
「じゃあもう、2人ん時は、もっと甘々なのか」
智也、面白そうに笑ってる。
……甘々、って言う言葉も、恥ずかしいな…………。
と、頷けないで居ると、智也は笑いながら話を続ける。
「西野みたいにさ、昔から知ってる訳じゃないからあそこまでは言わないけど……去年ゼミとかで見てた神月とは、別人に見える」
「智也から見てもそうなんだね」
「うん。ほんと、冷めてるイメージがあったからさ。今は全然違う。血が通ったみたいなイメージ」
「去年の玲央は血が通ってないイメージだったの?」
「うん。ほんと。冷めてる感じ。 なんかオレはそれ以外では、神月の事を表現できないかも」
ふーん、そうなんだ……と、冷めた感じの玲央を思い浮かべる。
……うーん…………?
……なんか、それはそれで。
ものすごく、カッコイイかもしれない。
「なんでそこで、にっこりすんの、優月」
智也にクスクス笑われて突っ込まれる。
「……あ、なんか。冷めてる玲央もカッコいいだろうなあって思っちゃって」
「――――……」
ぷ、と笑って、智也がオレを見つめてくる。
ちょっと恥ずかしくなってきて、頬に触れると、また熱くなってるし。
「ごめん、なんか咄嗟に……」
「別にいーけど。 優月、幸せそうだから」
「――――……昨日から、なんかオレやばいの、浮かれてて。 なんか、足元浮いてるみたいな気がしてて……」
智也が優しく笑いながら聞いてくれてるので、そう言ってしまうと。
「優月が、恋愛にそんなにのめりこむとは思わなかったなー。しかも相手が神月とか、今でも嘘みたいだけど」
「……だよねぇ」
「……でも何回かオレ、優月と神月が一緒のとこ見てるからな」
「うん?」
「好き合ってんのは、分かってる、かも。 だから、結構、納得はしてる」
智也にそんな風に言われると。
またまたすごく、嬉しくなってしまう。
またふわふわ浮いてるみたいになっちゃいそう。
ともだちにシェアしよう!