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第293話◇

「だって彼女居た時もだし、セフレもだし、……つかよく考えたらあれだよな、優月に付き合って朝来るとかだって、意味分かんねえし」  オレが答えてないのに、稔は延々続ける。  優月は、なんだか少し苦笑いしながら、稔を見守ってる感じ。 「なのに何、今の。今のだとどう聞いたって、迎えに行きたいって玲央が言ってて優月に断られてるって感じじゃん!」 「……ああ。よく分かったな」 「今の聞きゃわかるわ!!」  だから。勇紀と言い、お前と言い、何でそんなテンション高ぇの?  何が言いたいのか、よく分からねえし。 「お前さては、宇宙人だな、中身、玲央じゃねえだろ」  そのセリフには、隣で優月と村澤が、同時にぷ、と笑い出した。 「あーやだやだ、ほんっとに、意味わかんねぇ」 「何なんだよ、お前は。意味分かんねえのお前だっつの」 「オレじゃねーわ、 玲央だっつの!!!」  はー、やだやだ、と大げさな口調で言ってから、稔は優月に向き直った。 「優月、こいつ多分宇宙人だと思うけど…… まあ、仲良くしてやって、うん」 「……ん」  稔の言葉にクスクス笑いながら、優月はオレに視線を向けた。 「……宇宙人なの? 玲央」  可笑しそうに瞳を細める優月。  ……そんな風に笑われると。  キスしたくて、たまんないんだけど。 「もう、こいつのことはほっとこうぜ」  言って、優月の肩を抱いて、ポンポン、と肩を叩きながら、稔に背を向ける。 「ほっとくなー!」  あー、うるさい。  ――――……と思うのだけれど。  隣に居る優月が楽しそうで、クスクス笑ってるのが可愛いので。  優月を笑わせたのは一応稔だから。まあ、よしとしてやるか……。  ……にしても宇宙人ってなんだ。 意味分かんねえ。 「あ、玲央、オレさ、授業終わったらもう即、蒼くんのとこに行っちゃうね」 「ああ。じゃ、学校で会うのはこれで最後か」 「うん、そーなの。でも会えないと思ってたから、今会えて良かったけど」  嬉しそうに笑う優月。  可愛すぎて。無理。  思わず、むぎゅ、と抱き締めてしまった。 「気を付けて行って来いよな」  ぽんぽん、と背中を叩く。  そうして離した優月は、かあっと赤くなっているし、稔と村澤は苦笑いだし。  ……まーいーや。 「じゃ、優月、終わったら電話して。待ってるから」 「うん、いってきまーす」  優月はまだちょっと赤い顔で、でもニコニコしながらオレに手を振って、村澤と歩いて行った。なんとなく、その後ろ姿を見送ってると、ふと、優月が振り返って、またバイバイと手を振ってくる。  軽く手を振り返して。  姿が見えなくなってから、さて行くか、と稔を見ると。 「――――……なんか胸やけ」 「胸やけ?」 「何、お前、ずーっっとあんな感じで、甘々で接してるの?」 「――――……いや。違うかな」 「あ、違うの?」  ちょっとホッとしたような稔に、べ、と舌を出して見せる。 「いつもは、キスしたり抱き締めたりもっとしてる。恥ずかしそうだったから、しなかっただけ」  稔がしばし無言。  ――――……そのまま、オレから一歩離れて歩き出す。 「――――……さ。早く早く、勇紀のとこ行こうぜ」 「つか、食堂で、意味わかんねえこと、騒ぐなよ」 「――――……それは分からねえし……」 「分からねえし?」 「意味わかんねえのは、オ・マ・エ!!」  区切るように言ってから、すたすた歩いていく稔の後を、歩きながら。  ……ずっとオレを知ってる、稔たちの言う意味も、  ほんとは、分かってるけど、な……。 「玲央、歩くのおせー! 早くいくぞー!」    …………それにしたって、うるせーけど。  苦笑いしながら、速度を速め、稔の隣に並んだ。

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