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第336話◇

「あのさ、玲央」 「ん?」  にこ、と笑って見つめてくれる瞳に、何だかそれだけで、好きだなーなんて思いながら。 「……もっかい確認なんだけどさ。どのくらいの人まで、話しても平気?」  そう聞いてみた。玲央は、ふ、と笑んで。 「オレはほんとに、どこまででも」 「――――……全員でも?」 「ん、別に全員でも」 「……本当に?」 「――――……つか、お前オレの噂知ってるって言ってたろ?」  苦笑いで玲央が聞いてくる。 「うん。全部なのか分かんないけど……」 「何ならそれを上書きしてくれる位でちょうどいいけど」  くす、と笑われて。 「昨日も、オレの方は大丈夫って言っただろ? 優月が知られても大丈夫ってなった時に、好きなように話していいよ」 「――――……分かった」  玲央は、ほんとに、こういうの隠す気はないんだな。  ――――……強い、なあ……。 「無理しなくていいから」  よしよしと、撫でられる。 「オレはバンドもやってるし、噂されるのとか話題に上る事にも慣れてたから、無理に隠しても無駄っつーか、もう開き直ったとこあるけど」 「――――……」 「結構色んな噂飛んでても、歌を聞いてくれる奴は居るし、友達もあんまり気にしない奴らばっかだったし。それでもういいやって、割り切れてるっつーかさ?」 「……うん」 「優月はまだそこまで割り切れてないだろ――――……とか言ってる割に、ついさっき、優月好き宣言はしたけど」  はは、と苦笑いの玲央。 「まあ、あれは誤魔化そうと思えばまだ誤魔化せるだろ?」 「……誤魔化したりはするつもりないよ」  なんか、授業で会うそれぞれのグループに一気に話すと、もう次の時間にはめちゃくちゃ拡散してそうで、一瞬躊躇ってはしまったけど。  ……よく考えたら、別に広まったからって、何か被害があるとも思えないし。  あ、でも。  ――――……その前に、家族に話そうかなあ。オレ。  話したほうがいいのかなあ。  ……いや、絶対良いよね。大事な事だし。  あとは……いつ話すかって事だけど。 「玲央……あのさ」 「ん」 「……家族には、言う?」  そう聞くと、玲央はまっすぐオレを見て。ん、と頷いた。 「ずっとお前と居るには、いつか言わなきゃとは思う。でもオレの家族は……ちょっとめんどくせえから、もうすこし、既成事実が出来てからにするけど」 「既成事実?」 「もうこんだけの期間、付き合ってる、とか。ずっと一緒に居るとか。そういうこと」 「……なるほど」 「でも、多分、バイなのは知ってるだろうから――――……」 「え。知ってるの?」 「ネットで噂んなってるから…… でも、直接は話した事はない」  なるほど。  ――――……そっか、うちは、何も知らないからなー。  ……ていうか、オレが男となんて、オレが一番びっくりだからなー。 「じゃあ……オレも、玲央としばらく付き合ってから、家族には言うね」 「ん。そん時は、お互いの親、挨拶しようぜ」  そう言ってから、玲央はふと。オレを見て。 「オレの方は既成事実が必要な気がするから今そう言ったけどさ――――……優月が家族に、もう話しときたいって感じなら、話してもいいし。必要なら、挨拶行くけど」  普通に、なんでもないような事みたいに言う玲央。  ――――……ふふ、と笑って、うん、と頷いた。 「男の人と付き合ってるっていうのは……やっぱり家族には衝撃だと思うから。でも、玲央の事は、紹介したいな。仲の良い人っていう意味で良いから」 「いいよ。今度優月の家、行こ」 「――――……双子たち、すっごい騒ぐと思う」 「ん?」 「カッコいい人、好きだから」  ぷ、と笑う玲央。 「じゃあ行く時、すげえカッコよくしていこ」  楽しそうに笑うと、余計にキラキラが増す感じ。    カッコよくしていくって。  ……ていうか、いつでも、ほんと何着ててもカッコいいから、必要ないけど。  そう思いながらも、玲央がオレの家族と会うためにもっとカッコよくしてくれるのかーと思うと。なんかすごく嬉しくなった。

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