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第335話◇
「……ふ――――……は……」
なんかもう、瞳を開くのもやっと、な感じで。
玲央の顔を、見上げた。
「――――……」
キレイ……玲央の瞳。
その瞳に、自分が映ってるのが、こんなに嬉しいとか。
不思議な位。
「……可愛い」
くす、と笑って、何度も頬や耳や、あちこちキスされる。
「……っ」
もう恥ずかしくて、玲央の胸に手をついて、止める。
「れ、お――――……あの……クロのとこ……時間無くなっちゃう」
「んー……分かった。じゃあさ」
終わらせてくれそうな雰囲気にホッとして、玲央を見上げると。
「優月からキスして? それで終わりにする」
「――――……」
そんな言葉に、玲央を見つめると。
ただでさえ優しい瞳を、ふと細めて、笑う。
とくん。胸が、音を立てる。
……大好き。玲央。
玲央の両頬を手で挟んで。
めちゃくちゃ大事なのが、伝わるように、キスしてみた。
そーっと、そーっと。
ゆっくり触れて、少し押し付けて重ねて、それから、ゆっくりと離した。
離すと同時に、ゆっくりゆっくりと、瞳を開けると。
玲央も同時に瞳を開けてて。
「――――…………それさ」
「……うん?」
玲央が、ニヤ、と笑う。
「夜、やって」
「……ん?」
夜?
「――――……すっげえ燃えるから」
クス、と笑った玲央に、ちゅ、と頬にキスされる。
「めちゃくちゃ、気持ち良くしてやる、優月」
「――――……だいすき……だからしたんだよ?」
「分かってるよ。だから、じゃんか」
「………………っっ」
オレ。
――――……その気にさせた、ってこと?
……玲央のポイントが、よく分からない……。
「――――……このままマンション連れ帰って、抱きたいけど……」
「…………っ」
そんな風に言う玲央に、むぎゅっ、と抱き締められて。
それから、ぱ、と離された。
「離すって約束したからしょうがないな……。コンビニ行こ」
オレの道具を手に取って、そう言うと、玲央がドアを開けてくれる。
「うん」
ドアに近付いた所で、玲央が頭を撫でてくる。
「持つよ、ありがと」
「いいよ、別れる時渡す」
優しい声で言って、ドアを閉める。
「優月がさ」
「ん?」
「もっと、オレを欲しがったらいいな」
「え?」
「……オレいつも、お前が欲しいから」
「――――……今更なんだけど」
……何言ってるんだろう、玲央。
隣を歩いて、そんな事をしみじみ言ってる玲央を、じっと見つめる。
「オレ……ちょっと自制してるだけだよ。学校だから」
「……その自制がきかなくなる位、欲しがってくんねーかな」
歩きながら、頬に、ぷに、と触れられる。
「…………って、何言ってんだろうな、オレ」
クスクス玲央は笑って、オレから手を離す。
「多分さ」
「うん?」
「優月は、オレがそういう事大好きながっついてる奴って、思ってるんだろうけどさー」
「がっついてるって…… そんなこと、思わないよ?」
「そうか?」
「うん」
「……今までこんな風にはしてないんだぜ? 信じる?」
玲央は苦笑いしながら、オレを斜めに見下ろす。
――――……その視線が、すでに色っぽいからね……。
がっついてるなんて、そんな風に玲央の事を思いはしないけど、
大好きなんだろうなーとは思う。キスとか。そういうこと。してる時、玲央、楽しそうだし。色っぽすぎるし。
「――――……そういや、会った時から、キスしたいキスしたいって言ってたっけな、オレ」
「――――……」
…………確かに、それはそうだったような。
初めて会った時を思い出して、あらぬ方向を見ていたら、玲央にのぞき込まれた。
「そうだったなあって、今思ってるだろ」
「……キス、していい?っていうのは、聞かれたなあって……」
「うん、聞いた。キスしたかったんだよ、お前に」
そんな風に言って、オレを見て。
「なんか、すでに懐かしいな?」
クスクス笑って、玲央がまたオレの頬に触れた。
確かに。
……もうなんか、遠い昔な気がしてしまう。
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