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第338話◇

「いらっしゃいませー! あ、優月くんと――――……」  レジにいたおばちゃんが微笑む。 「こんにちは」  挨拶をしていると、品出しをしていたおばちゃんも、ひょこ、と顔をのぞかせた。 「いらっしゃいー。あ、またお友達と一緒?」 「あ、オレ、玲央です」  玲央が、自分の名前を名乗ってるのを、何だか面白くて見つめていると、  おばちゃん達は、嬉しそうに笑った。 「玲央くんね。 優月くんとほんと仲いいのね」 「もしかして、猫好き?」  その質問、さっきも皆にされてたなあ……ふふ、と笑いながら玲央を見上げると。  玲央はオレを見て、ふ、と笑った。  流し目されると、瞳がキラキラする。玲央。 「――――……そうですね」  柔らかく、優しく笑って、オレを見ながら頷いてる。  さっきみたいに、優月が好きだから、とは言わなかったけど。  そんな、優しい顔でオレの事見つめてたら――――……。  かぁっと熱を持った頬に、玲央はぷ、と笑って。  オレの頭に手を置いて、少し前へ移動させながら、玲央はおばちゃんたちを振り返る。 「今日は、缶詰よりおやつの方がいいですか?」  多分、あまりに特殊な雰囲気のオレ達に、呆けていたおばちゃん達。  玲央の言葉に。「えっ、あ、うん、そう、おやつで」みたいに、言葉が切れ切れになりながら答えてる。  猫のエサの所に着くと、おばちゃん達から一応死角に入る。 「~~~っ……もー、玲央…」  オレは、しゃがみこんで膝を抱えながら、クロのおやつを見るふりをして。  顔を上げられない。  隣にしゃがみこんだ玲央は、クスクス笑いながら、頭を撫でて、オレを覗き込んでくる。 「顔、赤い、優月」 「誰のせいですか……?」  敬語で聞いてしまうと、玲央は、すごく可笑しそうに、ははっと笑う。 「オレ、お前の事見ただけじゃんか」  見ただけって。  まあ確かに、見ただけと言われたら、そうなんだけどさあ……。 「……玲央ね?」 「うん?」 「玲央の見た目とか、顔とかって、ちょっと、特別だからね? さっきのあれ、見ただけとか、絶対誰も言わないからね?」 「特別って……」  玲央はクスクス笑ってるけど。 「ほんとに、分かって?」  2人でしゃがんで、見つめ合って、そう言うと。 「――――……」  玲央は少しの間、オレをじーっと見つめていたけれど。 「そう言う風に困った顔して見てくんの、死ぬほど可愛いんだけど」  玲央は、はー、とため息で。小声でそんな事言ってくる。  なんか全然、論点がちがうよーー……。  しかもまたまた、恥ずかしいし。  しゅううう、と、自分から湯気でも出てるような気がしながら、俯いてると。ぽんぽん、と頭を撫でられる。  キスしたいと思ってる時に頭撫でてる。  さっき、そんな事を聞いちゃったから余計に、照れちゃうんだよう……。

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