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第348話◇

【side*優月】  3限と4限は2時間連続で同じ語学の授業。  クラスで別れるので、全員知ってる。  少しだけ遅れてしまったので、こっそり中に入って、端に腰かけた。  さっきまで食堂で一緒だった友達も何人かいる。   近くに居たら絶対さっきの、聞かれると思うんだけど、もう授業始まってて、ほんと良かった。  しばらく授業に集中していたんだけれど。  ふ、と、気づく。  なんか、唇、甘い。  チョコの味――――……。  さっきの……。    思った瞬間。  さっき、玲央としていたキスが、一気に脳裏によみがえってしまった。  脳裏、どころじゃなくて。  ……なんか、唇に、感覚までよみがえるような感覚。 「……っ」  なんか、ぞく、と震えが走る。  う、わぁ……。ちょっと、待って……。  机の上の教科書を見るふりをしつつ、肘をついて、思い切り頬を隠した。  顔、あっつい……。  何で。玲央は。  あんななのかなー……。  恥ずかしすぎる………。  キスしながらチョコ食べるなんて。  もうオレ、チョコ食べるたんびに玲央のキスを、思い出してしまいそう。  玲央のキスって。  どーして、あんなに、あんなに…………やらしい……?   …………かああああああ。  やらしい、とか、頭の中で言ったら、もう余計にめちゃくちゃ恥ずかしくなってしまって、もはや耳まで熱すぎて、頬に触れてた手で、耳まで触れる。  耳も顔も、めちゃくちゃ熱いし。 「じゃあ、このページを読んで貰いましょう」  そんな声に、ものすごく、焦る。  ――――……先生、絶対今は当てないで―ー。  心の中で叫んでると、別の人が当てられて。心底ほっとする。  はー。よかった……。  こんな顔で、立ち上がりたくない。  教科書持つから、顔隠せないし。  ――――……早く熱いの、引いて……。    うーんうーん。  もう……。  もう。玲央ってば。  もう。もう。……ほんとに……。  ……もうしか、出てこない……。  ――――……はー。  大好きだけど……。  オレ、やばいなー。もう。  ――――……いくら、あんまり見えないとこっていったって。  学校で、あんなにキスされて。  授業中に、そのキス、思い出して、それしか考えられなくなるとか。  すごくヤバい気がする……。  ……するん、だけど。  優しい触れ方と、めちゃくちゃ、熱いキスと。  ――――……玲央の、瞳とか。笑った顔、が。  なんか、囁かれる、言葉とかも。  思い出すだけで、胸が、熱くなる。  もう、好きでも、しょうがないよね……。  あれを向けられて、玲央を、拒否できる人なんて、居ないよね……。  顔、熱っつ……。  落ち着いて、オレ。  玲央、ここに居ないんだから、こんなに真っ赤になんなくても良いよね……。うう。  もう。  ……オレほんと、先週から、授業がヤバい……。  やっぱり、ちょっと、学校では、控えてもらおう。  これ、むりだ。オレ……。      キャパを、めちゃくちゃオーバーしてる。  なんか、熱が引く事、考えないと。  最近これ、よくしてる気がする。  大体無駄に終わるんだけど…… でも今は、玲央が居ないから、何か思い出せれば熱も引くかも……。  えっと……。  ……えっと、今日は……4限も英語で……。  で、絵を描きに行って。久先生と会って。今日は蒼くん 個展が最終日だから来れなくて……。その後、玲央が迎えに来てくれて……。  ドライブ連れて行ってくれるって……楽しみすぎるなあ。  どこ行くんだろう。  ていうか、ただ帰り道だけでも十分なんだけど、玲央のあの言い方だと、きっとどこか、違うとこも走ってくれそうな気がするし、ああ、たのし……。  そこではっと気づく。  ――――……熱は引いてきたけど。  考えてるのは、結局、玲央の事ばかり。  だめだ、これ。オレ。  はあああぁ、と小さく、長く、ため息を付いた……。

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