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第349話◇

 3限が終わって休憩時間。  とりあえず、なんとか後半は、頑張って授業に取り組んだ。なんとか。   「優月ー」  クラスメート3人に呼ばれる。さっき食堂には居なかったメンバーなので、ちょっとホッとしながら、近づいてくる皆を見上げる。 「うん、何?」 「今週金曜空いてる?」 「何かあるの?」 「クラス会しようぜ? 2年になってからまだしてなかったじゃん?」 「あ、そうだね。うん、い――――……いと思ったんだけど、ちょっと予定確認してからでもいい?」 「まあいいけど……何の確認?」 「予定、入るかもしれないから……」  玲央と、付き合って、初めての金曜だから。  玲央に用事があるかもしれないけど、聞いてからにしようっと。 「なあ、優月彼女でもできた?」 「え、何で?」 「なんかウキウキ、予定入るかもとか言ってるから」  ニヤニヤ笑われて。  オレそんなに分かりやすいのかな。  ドキドキしながら、皆を見上げた瞬間。   「おいおいおーい、優月ー」  あ。さっき食堂で一緒だった皆が来てしまった。 「さっきのあれは、どー反応すりゃいーの?」 「え。あ。……玲央?」 「そうそう、玲央! 何あれ?」  何あれって、言われてもなー。それこそ、何て答えれば……?? 「あー……うん……何だと、思った?」  思わず聞いてしまうと。 「あいつ……なんか迫力ありすぎ」 「そーだよ、見られるだけで固まるのにさ」 「なんつったっけ! さっき。 優月が好きだから?」  ……優月が好きだからって。そんな風に言ったっけ?? 「好きなのは、ね、猫の話だったでしょ……」  確かそういう話だったはず……。  玲央は、オレ達の事、皆に認めても良いみたいだったけど。  さっき食堂にいた皆と、今クラス会の話してきた皆と……ここで認めるの……勇気がいりすぎる。ここ教室だから、叫ばれそうだし。  よし、別の話にしよう!  そうだ、クラス会の話しよう、うん、そうしよ……。 「あのさ、クラ」  言いかけたのに、かぶせるようにして。 「玲央って 神月だろ? 優月、仲いいんだよな。先週も頭なでられてたし」 「そーいや、何であいつ仲いいの? 接点何なの?」  うう。失敗……。  ……そうだ、こっちの皆には、先週、玲央といるとこも見られてるんだった。ていうかさ。絶対、玲央が目立ちすぎなんだよね……ただ、話してるだけなのにさ……。 「玲央とは……猫のとこで会って……」  クロを抱っこしてて。話して……。なんでか、キスされて。  寝てみる?て聞かれた。って。なんか言葉にまとめちゃうと、とんでもないな。なんて思うと、可笑しくなってしまう。  皆にはとても言えない。 「猫のとこで会ったからって、よくお前、あいつと仲良くなったよなー?」 「怖くねえの?」 「え。だから、怖くないってば。優しいよ、玲央」  言うと、皆、ふーーーん???と、不思議そうな顔で頷いてる。 「あ、クラス会って、皆行くの?」  皆の言葉が途切れた時を見計らって、そう聞いたら。 「オレらは行く。ていうか、ここの皆と、あそこら辺の女子で、やろうって決めたとこだからさ。あとでクラスのグループに連絡入れるけど」 「優月は行けないの?」 「優月は確認してからだって」 「ふーん? いこーぜ、優月?」 「ん、考えとくね」  金曜の夕方だもんね……。  先週はバンドの練習してたけど、ライブがあったからかもしれないし……。  玲央は、何て言うんだろう。  ずっと一緒に居たい、みたいな事言ってくれてるけど。  先週から、ずっと一緒だったから、普段の金曜日、玲央が何して過ごしてたのか、全然知らないんだよね。  オレがクラス会とかに行くのを、嫌がるとは思えないけど。  とか何だか、一瞬で、色々な事が頭を巡る。  そこまで考えて。  何だかふっと、思ったのは。    わー、なんか。  こういうの考えるのって。  ちょっと…………すごく? 恋人っぽいかも。  だって。  オレがどこに行こうが、普通はオレ以外の人には関係ないはずだし。  ……オレの予定を決めるのに、金曜の玲央はどうしてるのかなって、考えちゃうとか。なんか。こういうの、初めてかも。  なんか、嬉しい、かも。 「なんか優月嬉しそう」 「え? あ、別に……」 「何考えてた?」 「ううん、別に大したことじゃないよ?」  ちょっと、1人で、浸ってただけだし。  とその時、4限開始のチャイム。  皆それぞれ座ってた席に戻って行く。  さ。    この授業頑張って。絵を描いて。  ――――……玲央に会えるまで、頑張ろ。  なんか。  隠してるよりも、皆に叫ばれても良い場所で、 言っちゃった方が良さそうだなあ。  そしたら、玲央の事も、隠さず、話せる……かな。    ただ仲良くしてるだけでも謎だって言われてるのに。  付き合ってるとか言ったら……信じてくれるかな??  信じてくれないかもなー……なんて思うと、ちょっと可笑しい。

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