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第375話◇

 車を運転してきて、駐車場について連絡を入れるとすぐ電話がかかってきて、優月がやって来た。片付けてくるように言うと、なんだか少し恥ずかしそうな顔をして、絵を見てくか聞かれて。もちろん見てみたいと思って。  優月と教室に入って絵を見始めた所で、まさかのじいちゃんに遭遇。  優月の絵の教室に、オレのじいちゃん、「蒼さんの父親」で「優月のおじいちゃんみたい」で「じいちゃんの親友」の先生、と優月とオレ。  しかも優月とじいちゃんは、一回もう会ってて。希生さん、とか呼んでるし。 ほんと、謎すぎる空間。  あっという間に、優月とのこと、バレるし。  優月の先生とじいちゃんと別れて、車に優月を乗せて、しばらく走ってきた。色んな事話しながら。  ――――……話してる事は、ほんとに色々で。  教習所の話から夏休みの話になって、それからチョコ食べさせて。  奏人の話だったり。  これからオレ達の予定を、どうするか、ていう話をしたり。  優月と居るといつも思う事なんだけど。  なんか今余計に思う。 「――――……オレさぁ、優月」 「うん」 「……今までさ」 「うん……?」 「あんま深く、人と付き合ってきてない、というか」 「……うん?」 「まあ友達は居るし……幼稚園から一緒だからそこらへんの奴らとはまあ割と仲はいいし、結構お互いの事知ってる奴ら多いけどさ」 「うん」 「……全部自分の好きなように動いて、好きにしてきたんだよなー、オレ」 「うん……?」  なんか不思議そうに、優月が頷きながら、オレを見てるのが分かる。  信号が赤にならないので、優月の方、見れないけど。  ずっと繋いでる手を少し握ってみる。 「……なんかお前みたいに、人のことばっか考えてるのが、不思議だけど」 「――――……? オレ、そんな事ないけど……??」  ……まあ。自覚無いんだろうけど。 「…………お前と居ると、なんかほんと……」 「――――……」 「……和むし」 「……何それ」  クスクス笑う優月。 「……なんかそういうのに和んでるオレが不思議なんだけどなー」  なんか。  ほんとに色んな話をしてても。  ――――……なんの話をしてても。  ずっと、なんか、和んでるし。オレ。    何なら、奏人と優月が一緒に帰ったとか。  普通に聞いたら、元セフレと、今の恋人とか。修羅場かよ、と思うとこだけど。なんか優月だから大丈夫かなと思いながら話を聞いた。  で、聞き終わって思ったのは。  張り合いなくて、腹立つとか。優月と話すと疲れるとか。  ――――……奏人のセリフ、何となく、気持ちが分かる気がする。  優月が迎え撃つタイプだったら、奏人は気ぃ強いし、きっとほんと修羅場かもしれないけど。  きっと、奏人も戸惑ったんだろうな。  ほわっと流されて、意味わかんなかっただろうなと想像すると、苦笑いすら浮かびそうになる。  優月って呼びそうとか。  奏人「くん」呼びが気持ち悪いとか。  何あいつ。優月と名前で呼びあう気、あんのかなと思うと。  ――――……いつかそんな事になるのかな、とか。  普通ならありえない話だけど。  ……なんか、ありそうな気もして。  優月はところどころ話そうとして止まったり。  きっと、全部は言ってないんだろう。分かんないとこは奏人と話して、とか言ってるし。――――……つか、普通、奏人と話してとか、言わねえだろ。  普通に考えて、元セフレと話して、なんて、言う奴居ない。  ――――……でも、言っちゃうんだよなー、優月は。  なんかそんな事を思っていると。  ……たまらなく、可愛いなーと、思ったりして。  信号で止まって。  隣の優月を見つめると、まっすぐ見つめ返して、にっこり笑ってくる。 「優月」 「うん?」 「……オレ、お前と離れる気、無いからな」 「え。……あ、うん」  びっくりした顔をして。それから、ふわふわ笑って頷く。 「うん。オレも。無い、よ?」  ちょっと恥ずかしそうに。  笑みながら言うのがほんと可愛くて。  その頭をよしよし、と撫でた。     

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