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第376話◇

「優月さ、そういえば、昼にオレと別れた後どうだった?」 「どうだったって??」 「友達に、バレなかった?」 「あー……うん……? バレては、ないと思う」  なら良かった、かな。とりあえずは。 「でもね。――――……あの、ほら、クロの所に行く理由が……優月が好きだからって、玲央、言ったでしょ」 「ん。言った」 「……あれについて、色々言ってたよ」 「何て?」  聞くと、優月は、んー……と、少し考えてから。 「どう反応すればいいの? とか。玲央が迫力ありすぎる、とか」  言いながら優月は、とても楽しそうにクスクス笑ってる。 「迫力あった? あん時」  少し不思議で聞くと。 「意味聞いてないけど、立ってるだけでめちゃくちゃカッコイイからだと思うんだけど……?」  優月って、ほんと、こういう事だけは、あんま照れずにいつも言うよな。  何でだ? あれか、造形として、ただ淡々と言ってるみたいな感じか?  絵のモデルにでも、言ってるつもりかな……。 「玲央との接点を聞かれた」 「ああ……まあ。無さそうだよな、オレとお前に接点」 「……うん、なんかそう思うみたいで…… 分かるけど」  優月もクスクス笑いながら。 「猫の所で偶然会って、話して、って言ったらさ」 「うん」 「そんなんで、よく仲良くなったな?って言われたよ」 「キスされたーとか言わなかったのか?」  言う訳ないと思いながらそう言うと。 「い、いわないよ……っ」  ――――……信号青だから、優月のほうは見えないけど、絶対今、恥ずかしがってる。そう、こっちは恥ずかしがるんだよな。  はは。かわい。 「あ、でもね、玲央」 「ん」 「――――……今度クラス会、行ったら」 「ん」 「……話して来ようと思って」 「何を?」  少し沈黙。  その後。 「玲央の事が好きな事とか、付き合ってる事、言っちゃおうかなって」 「――――……」 「クラス会、いつも、座敷とかで締め切って騒いでるし、いっそ、騒がれてもいい場所で、言っちゃおうかなって思ってるんだけど、良い?」 「――――……それって、バレて、とかじゃなくて、自分から言うって事?」 「うん。自分から、言っちゃおうかなって」 「――――……」  言うのは全然、オレは良いし。  もちろん、隠さなくていいって思ってるし、言っても良いよって優月にも話してるし。  でも優月から打ち明ける、か。もしかしてそうなのかとか、そんな感じでバレてしまうならしょうがねえと思うけど。 「言えるのか?」  バレそうにもなってないのに、わざわざ自分からカミングアウト。  なんとなく、それは言えるのか? と思って、聞くと。 「言えるよ? めちゃくちゃ、照れちゃいそうだけど」  とか言いながら、クスクス笑ってる。  ――――……少し、心配。  優月が、この感じで、照れながら、オレと付き合ってると自分から告白した時の、こいつの周りって。どんな反応、するんだろうか。  優月に嫌な事言う奴、そんなに居そうな気はしないんだけど。  内容が内容だしな。 「優月」 「ん」 「もし気持ち悪いとか、言われたら。どーする?」 「――――……男同士なのが?」 「そう。言う奴も居るかも」 「――――……別にどうもしないかな」 「……傷つかないか?」  そう言うと、優月はオレを見て、ふふ、と笑った。 「大丈夫」 「――――……ほんとに?」 「なんかね、皆、オレと玲央が居るのがすごく不思議みたいで。何で仲いいの?とかずっと聞かれそうなんだよね……そのたびに、なんか誤魔化してるのも嫌だから話したい」 「――――……」 「……こういうの分からない人は、気持ち悪いって思うかも。それを思うのは自由だからさ。別に気持ち悪いって言われても……大丈夫」 「――――……」 「――――……だって、好きだから、そうなったんだもん。玲央が、オレと居てくれるなら、そんなのは気にならない、かな」 「――――……」 「玲央とオレが仲良くしてたら、いつか分かってくれるかもしれないし。分かってくれなくても、それはそれでしょうがないって思ってるし……大丈夫だよ?」  最後、にこ、と笑って、オレを見つめてくる。  しばらく、黙って聞いていたけど。  なんかこういう所は。  ――――……オレより、強いのかも。  強すぎるんじゃなくて――――……。  柔らかくて、強い。  なんかこーいうとこも、すげえ好きかも。    と、改めて思ってしまう。

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