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第377話◇
卵料理の店があるビルに入って、駐車場に車を止める。
「……優月」
「ん?」
シートベルトを外しながら、オレを見つめる優月の肩に手を回して、抱き込んでキスした。
「――――……っん……?」
人が通ったら丸見え――――……でもねえか、暗いし。……まあいいや。
抱き込んだから、優月の事は、見えねえだろうし。
「……っ…………ン……っ」
ぎゅう、と目をつむってる。
――――……ああ、マジで可愛い。
しばらくの間、思う存分キスして。
まあでも、そんなにエロくならないように少しだけ加減して。
そっと、舌を離すと、閉じてた瞳を、ゆっくりと開いて。
優月がまっすぐにオレを見つめる。
「――――……玲央……?」
キスでぼうっとした顔を、見つめていると、かぁっと赤くなる。
「……ありがとな、優月」
「――――……何が……?」
「お前がオレの事好きなんだなーとか……オレもそうなんだとか思うとさ」
「――――……」
「なんか。よくわかんねえけど、気分がすげー上がる」
「――――……」
頬に触れて、撫でてると。
優月はオレをまっすぐに見つめて。それから、嬉しそうに微笑んで。
それがあんまり可愛く見えて、じっと見つめ返していると。
「――――……?」
両頬を、優月の手で挟まれたと思ったら。
ぐい、と引っ張られて。
「――――……」
ちゅ、とキスされた。
少しだけ触れて。 それから少しだけ離れて。
触れそうな位、近くのままで。優月がまた、ふわ、と微笑む。
「大好きだってば」
そう言って、もう一度、触れるだけのキスが、唇に重なってきた。
なんか、もう、よく分かんねー感覚。
体の奥から、ほわっと、あっついものが全身に巡るというか。
――――……もう抱き締めて、くっついて。
もう1ミリも離したくないと、思うというか。
キスが離れて。
――――……なんか、オレからめちゃくちゃキスしたいような。
優月のキスの感触、無くしたくないような。
どっちも、心の中にあって。
結局、オレは、そのまま、ぎゅ、と優月を抱き締めた。
「――――……あーもう…… お前、ほんと、可愛いな……」
「――――……」
腕の中の優月が、クスクス笑ってる。
「玲央ってさ……今まで、そういうこと、言ってないんだよね……?」
「ん。言ってねーな」
「……今、言ってるのって、どう思ってるの?」
どう思ってる?
オレが自分の事をって事だよな……。
「……まあ。自分では、意味がわかんねえってとこかな……」
「――――……そうなんだ」
また優月、クスクス笑ってる。
「意味わかんないけど、言ってくれてるんだね」
笑み交じりでそんな風に言われて。
抱き締めて、その背をポンポン撫でていると。
「……好きって、言われるのってさ――――……」
ぎゅー、と抱き付かれて。
「……すごい、嬉しいよね……」
腕の中に居る優月が愛しすぎて、ほんと困る。
自分でも自分のこと、ほんとお前誰だ?と思ってしまう。
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