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第422話◇

「席替えしよう」と稔が言い出して、場所を変えることになった。というか、多分稔は、オレと玲央を少し離して、オレと話がしたかったみたいで。  オレは智也と稔の間に挟まれて。玲央は甲斐と颯也の間。 「玲央、一曲くらい歌ったら?」    勇紀がふと、そう言い出した。  あ。聞きたい。オレもぱっと玲央を見ると、すぐに玲央と目が合った。  ふ、と笑まれて。  玲央は勇紀が持ってたタッチパネルを受け取った。 「――――……」  何にすっかなー、という感じで、玲央が画面を見てる。  内心ワクワクしていると。 「なあ、智也はさ、優月と長いんだろ?」  オレを挟んで、稔が智也にそう聞いた。 「うん。長いね」 「優月が男とって、びっくりしなかったの?」  稔の質問に、びっくりかー……と智也が呟いて、オレを見る。 「神月……じゃなくて、玲央と、ってのには驚いたし。最初セフレで良いって言ったとか言うから、それはびっくりした」  智也の苦笑いに、オレも「そうだよね」と笑ってしまう。  「男ってことには?」 「んー……? そこまでじゃなかったかなあ……」 「そうなんだ。……ん? 優月ってもともと、男が対象?」 「ううん。……あ、ううんていうか、そういうの、考えた事、無かった」 「何かお前って、頭やわらかそうだもんなぁ……」  稔にしみじみ言われて首を傾げていると、智也が横で笑い出した。 「確かに。優月はものすごい柔軟だよな」 「そうかな? 柔軟……?」 「うん。誰よりも柔らかい気がする。……まあオレも割と柔軟かなー」 「あー……うん、そうだねー。 智也はそうだと思う」 「お前には負けるけど」  智也にクスクス笑われた時。   「オレは?」  稔がそう言って、オレと智也を見る。 「んー……? どうかな。まだよく分かんないけど」  オレが、稔を見ながら、んー、と考えていると。 「稔は……自由って感じかな」  智也が言ったセリフに、オレはすぐ納得して、うんそうだね、自由って感じ。と笑ってしまった。 「オレが自由なら……じゃあ玲央は?」  続けて稔にそう聞かれて。玲央は……と呟く。  柔軟……柔らかい……??  とは違うような……。なんだろう。でも、頭、固くもない気がする。 「……玲央も自由、かなあ? ちょっと似てるよね?」  そう言うと、稔はものすごーく嫌そうな顔をして。 「はー? いやいや、似てねーし」  と言う。 「似てるから仲良しなんじゃないの?」 「オレが玲央と似てるっての??」 「う、うーーん……??」  そっくり、とは言わないけど。  智也も隣で苦笑いで、大きく頷く訳でもないし。 「なあなあ、オレと玲央って、似てる?」  稔が、勇紀達3人に向けてそう言うと。  3人が答えるよりも早く。 「は? つか、似てねーし。聞くまでもないだろーが」  と、玲央からツッコミが飛んでくる。 「……ていうか、同じ感じで嫌がってるしな?」  智也が笑ってそう言って。  「やっぱりなんか、似てるよね」とオレも、笑ってしまう。 「稔の、知らないオレに平気で話しかけるようなところは、玲央似てない気がするけど……似てるっていうか。好きに言いあってても結局気が合ってそう」  オレが稔にそう言うと。稔は、ふ、と笑った。 「――――……まあ、なんだかんだで、付き合い長いしなー」  結局仲良しなんだろうなーと、その笑みを見てると、思う。    その時。玲央が曲を決めて入力したみたいで、立ち上がった。勇紀からマイクを受け取って、前のステージみたいな所に立つ。 「――――……」  カラオケのパーティルームなのに。  何かマイクを持って前に立つと玲央の周りだけ、空気が違う。  さっきまで、稔とふざけて、言い合ってたのに。  多分皆も同じ感じ。  誰も何もしゃべらなくなって、玲央に視線を向ける。  稔ですら、黙った。     ――――……ほんとに。カッコイイなー……。  ほんと。ドキドキしてしまう。  

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