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第446話◇

 しばらく眠いふりで倒れていたけど、その内ようやく落ち着いて、顔を上げた。いつのまにか周りに増えてた友達たちと挨拶をしてる内に教授がやってきた。  何やかやと、教授の雑談中。     とりあえず、オレの部屋から玲央のマンションに運び込む物、考えないと……。  ――――……学校の道具と。服と……画材まだ持ってきてないのと……。  でもやっぱりそんなには無いかも。  身一つでお嫁にとか。   玲央と、話したな……。  お嫁……。  ふ、と微笑んでしまいそうになって、顔を引き締める。  お嫁とか言われて、喜ぶ日がくるなんて。  さすがに考えた事も無かった。  ……まあやっぱり、男だから。  男側の立場で、考えてたし。  もう、価値観、ひっくり返りすぎちゃって、本当に、不思議だけど。  ――――……玲央と過ごせば過ごすだけ。  大好きだなって、思う。  何でだろ。  色々皆が言ってるのを聞いてるし。玲央も自分で、オレと会う前の自分のこと、話すし。オレと会う前の玲央は、オレとは全然違う生活してたんだろうなーと思うのに。   ……オレと居ると、健康体になるって言ってた。  ふふ。それは良かったけど。  オレとは、本当に、違う生活で、違う世界に居たんだろうなあって、結構はっきり、想像できてしまうのだけれど。  ――――……不思議と今、一緒に居て、全然違和感が無いのは、玲央が合わせてくれてるからなのかな。  でも、無理に合わせてくれてるというよりは……。  むしろオレより玲央の方が起きるの早いし……。  オレってば、ぐーぐー寝てて。また玲央が居ないって朝起きて、焦るし。  玲央、無理してるって感じはしない。  無理やり起きてる感じも、しないし。  無理にご飯を食べてる感じもしない。ていうか、すごくちゃんと朝ごはん作ってるし。  でも勇紀達、1限に玲央が居るって、すごくびっくりしてたし。玲央も、朝食べずにもっと遅かったって、言ってたし。  ちょっぴり、無理してないか心配になるけど。  ――――……あぁ、でも。  むしろ、楽しそう……かなあ?  ふとそう思って。オレと一緒に居る玲央を、思い起こしてみる。  ……朝ごはんの材料買う時も。作ってる時も。食べてる時も。  多分、無理はしてなくて。  オレと一緒にしてる事、楽しんでくれてる、気がする。  思わずまた、微笑んでしまう。  口元を手で押さえて、そのまま片肘をつく。  教授が授業を始めたので、右手でノートを取りながら。  楽しそうな玲央を思い浮かべてると。  だめだ、なんか。幸せ過ぎて。  大好きって思いすぎてて、本当に、ヤバい気が、する。  こんなにいっぱい大好きで。  どーしようかな。  ――――……こんな大好きな人の家に。  荷物運び込んで、一緒に暮らしていいとか言ってもらえるとか。  …………幸せ過ぎて、頭の中が、溶けちゃうかもしれない。  玲央の事しか考えられなくなって、使い物にならなくなったら、   ほんとどうしよう。  ――――……玲央と、して寝ると、ぐっすり眠れるとか。  朝からすっごく恥ずかしい事言ったのに。可愛いとか。言ってくれて。  抱き締めて、くれて。  玲央、大好き、だなあ……。    とか。  今考えてる事も、相当溶けてるよなあ、オレ……。

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