444 / 856
第450話◇
「つか、オレ、そんなに相手、見てなかったか?」
「うん。見てないよ。全然。玲央を見てただけじゃ、そん時付き合ってる子は分かんなかった感じ。でも今は、お前が優月を好きなのは、それはそれはよーく、分かるけど」
言い切られて、うーん?としばし考えるが。
……まあ確かに、優月を見てるような感じでは見てなかったか。……ほかに男友達が居れば、彼女の事とか、まったく気にしていなかったような気もする、な……。
「だから今まではさ、玲央は全然相手を見てなくて、相手が玲央をずっと見てたんだよな。だからそういうのでもともと不安な子達だからさ、少し玲央が違う子と話したり、仲良くしたりすると、すぐキレられてたんじゃねえのかなって、昨日、帰りながら、分析した」
「何の分析だよ」
もはや苦笑いしか浮かばない。
「それで行くと、優月と玲央だと、玲央が優月を見てるし。優月も、ちゃんと大事なとこは玲央を見るし。――――……なんか、すげー嬉しそうに見るしな。あれを見てたら、お前が可愛いって言ってるのも、やっとほんとに実感したというか……」
「――――……」
「て事で、オレの分析は、終了」
「何だそれ……」
「でもさ、やっぱり、玲央の方がずっと誰かを見てるっていう事態に慣れないもんだから、やっぱりオレは、まだ混乱中」
あはは、と笑って、オレの腕をバシバシと叩く。
「ってぇ」
「まあでも――――……あの感じだから、お前がいいなら、もしかして、ずっと続くのかなとも、勝手に思った」
「――――……まあ。……続けばいいと、思ってるけどな」
「おー……。つか、そんなのも初めて聞いた。今までお前、別れても次がいるしって感じだったし」
そう言われて、少し考える。
「つか――――……居ないだろ、優月みたいな、あんな感じ……」
思ったままそう言うと、へー、と稔が面白そうに笑う。
「なんか、ずーっとお前と居たけどさ。初めての玲央ばっかで、笑えるー」
「……笑うな」
「いや、笑うでしょ。180度違いすぎだし」
教室について、隣で腰かけると、ふっと稔が何かに気づいたように、あ、と言って。こそこそと声を小さく言う事には。
「なんかさー……朝からあれなんだけど」
「ん?」
「優月と、エロい事とか、してんの?」
マジで朝から何言ってたんだこいつは、と思うのだけれど。
「……つか、オレがしないと思う?」
そう答えると、稔は、んー、と笑ってから。
「思わないけどさ。優月って、そういうイメージがなんか、沸かない」
「ふーん……」
「何、ふーんて。……怖いんだけど」
「……もー反応も全部素直だから、可愛くてたまんねーけどな」
「そうなのかー。うーん、想像できない」
「想像したら、ぶん殴る」
オレのそんな台詞に稔は笑って。
「だから想像が出来ねえんだって」
「すんな」
「だから……はーもう、いいよ、玲央が溺愛してんのは、超分かったから」
呆れたように笑いながら、稔がオレを見てくる。
ともだちにシェアしよう!