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第451話◇

 昼食。オレも甲斐も颯也も、基本何でもいいし、どこでもいい。  部室が近い食堂が多いのは、食事の後、部室の方が静かで過ごしやすいから、移動が楽だからってだけ。  場所を変えるのは、大抵、勇紀が、あれが食べたいとかいうから。  それも、面倒な時は行かない。  まあ、附属の奴らは多いし、どこに行っても、誰か知ってる奴は居て、適当に顔を知ってる奴の所に、集まる。  だから、特に昼、約束してるとかでは、ない。  今日は稔と2限が一緒だったので、そのまま、近くの食堂に入った。  見知った顔の所に座り、なんだかんだと適当に話しながら、食事をしていた時。たまたま、優月もこの食堂だったみたいで、入り口の方から何人かと一緒に現れた。  二つ先のテーブル、少し離れた所に、優月が席を取った。  オレには気づいていない。  友達皆と、楽しそうに話しながら、食事を買いに歩いていく。  ……なんかこんな風に姿が見えるからって、嬉しいとか。 「玲央、生姜焼きうまい??」  稔が聞いてくる。 「ん。まあまあ」 「そっか。オレも今度食べよーっと」  ――――……姿を見るだけで嬉しいとか。  絶対こいつには言わない。なんて思いながら、稔に頷く。  食事をしながら、周りの奴らと適当に話していると、勇紀から連絡がきた。 『今日どこに居んのー?』と聞かれたから、今居る食堂を教える。しばらくして、『部室来る?』と聞かれたので、「多分今日は行かない」と入れた。 「あ、玲央だー」  女子が何人か、近づいてくる。エスカレーター組も何人か。 「ねー、玲央、遊ぼうよー」 「ご飯いこ、ご飯」  腕に触れて、軽くゆすられる。  ――――……こん中には関係もった奴は居ないから、オレが、好きな奴が出来たとは伝えてなくて、まだ誰も知らねーか、とため息を付きそうな気分で居ると。 「玲央、もう、そういうかるーく遊ぶのしないってさ」  稔が、ニヤニヤしながら、女子達にそう言う。 「えー何で―?」  気づくと、周りに女子がたくさん。 「玲央、今好きな子の事しか考えられないって」  稔が言った瞬間。シン、と静まり返って。  その次の瞬間。 「えーーー!!??」  と、叫び声。 「玲央に好きな子??」 「嘘でしょ?」 「玲央を、好きな子、でしょ??」  ……きゃあきゃあ、やかましい。  うんざりしながら稔を見ると。  何やらクックッと面白そうに笑ってる。  つーかお前……。  この状況、まとめろ。そう思うのだけれど、稔を含め、周りの連中は面白そうに笑ってる。  その時稔を通り越して向こう側。  食事のトレーを持って、席に戻ってきたらしい優月が、ぎゃあぎゃあやかましいこっちに気付いたみたいで、ふ、と視線を向けてきて。  あ、玲央だ。みたいな顔をしてる。  しかも。状況としては、オレ、今、女に囲まれまくっているのだけれど。  目が合うと。  優月は、嬉しそうに、にこ、と笑って。友達に何か言われて、返事をしながら、席に座った。 「――――……」  はー、とため息。  ――――……この状況見て、笑えるのは、なんか優月らしいけど。  ちょっとさすがにどうなんだ、と思い。 「マジ。好きな奴居るから無理。あと、ベタベタすんな」  もはや面倒で、はっきり言い切ったのに。 「うっそ、まじなのー?」 「ていうか、ベタベタすんなって玲央が言うとか……」  さすがにはっきり言い過ぎたか?と思った瞬間。 「ていうか、玲央に言われると、余計触りたくなるんだけどー」 「分かる―」  めちゃくちゃ腕を組まれて、絡まれる。 「だから、ひっつくなって。離れろ」  ――――……ああ、もう騒ぐと、優月がこっち見るし。  ……つか、ニコニコしてる。はー。  楽しそうだなとか、思ってそうだな、あれ……。

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