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◇番外編「ある夏の日」1/2

 学校が終わって待ち合わせたら、マンションとは違う駅の方に歩き出した玲央。何にも聞かずについてきて、と言われた。もちろんついてく。  そしたら駅から特急に乗った。それはちょっとびっくりはしたけど。  車内で駅弁を食べて、辿り着いた先は観光地。  バスに二十分乗って、湖に到着。もう結構暗くなりかけてるのに、人が結構居る。 「なんか、結構人居るんだね」 「ん、そだな」  くす、と笑う玲央が、オレの手を取って、歩き出す。  暗いし、誰もこっち見てないし。  ていうか、見ててもいっか、と、玲央の手を握り返して一緒に湖の側を歩き出す。遠くで沈みかけている夕陽がとっても綺麗。  なんか不思議。  さっきまで、学校に居たのに。  今はこんな、静かな湖の側を、玲央と歩いてるって。  少し人から離れたところで玲央が、湖に降りる階段の途中に腰かけた。  オレも、その隣に座ると。 「……ほんとに聞かないんだな」  玲央がクスクス笑って、オレを覗き込んでくる。繋いでた手は離したけど、かわりに、すごく密着して座ってる感じ。 「聞かないって?」 「何しにこんなとこまで連れてこられたかとか」 「ん。だって聞かないでって」 「こんな遠くにいきなり連れてこられてんのにな?」  クスクス笑って、よしよし撫でられる。 「言ったのが、玲央だから。他の人なら、多分最初に聞いてるよ」  ふふ、と笑って答えたら、玲央は、ふ、と瞳を細めた。 「そんなに信じて、変なとこ、つれてかれちゃったらどーすんの?」  色っぽく笑んで、至近距離で見つめられると。  どうしたって、ドキドキしてしまう。 「――――……だめだからな、オレ以外にはついてっちゃ」  クスクス笑う玲央の手が頬に滑ってくる。 「いかない、よ……」  ドキドキしながら答えると。 「ん。なら良し」  と玲央が笑う。そのまま引き寄せられて、キスされた。  歩いてくる間も、人、居なかったし、暗いし。  何度か離れてはキスされて。  なんだか幸せ……と、そのまま、キスを受けていたら。なんだか遠くの方で、何かの声がする。 「……? 何かの放送?」  玲央から少し離れて、ふ、と声の方に視線を向けた瞬間。  何か。聞いた事のある、音がした。  ……え、これって――――……。    目の前の湖の上に、大きな花火が上がった。 「う、わ……」  続けて何個も何個も、大きな花火があがる。  やっぱり、花火が打ちあがる音だった。 「――――……花火……」  玲央を見つめると、「花火見てな」と笑われる。  目の前で次々上がる、花火が綺麗で。  どうやらさっき聞こえた声は、花火のアナウンスだったみたい。  合間合間に、少し聞こえるんだけど、何を言ってるかは聞き取れない。 「もっとずっと向こうが花火会場なんだけどこっちからも見えるって書いてあってさ」  玲央がそんな風に説明してくれる。  また花火が上がり始めた。  綺麗すぎて。  ただただ、見つめ続ける。    ふ、と玲央に視線を向けると。  ん? と優しく見つめられる。  花火の光が、いつもと違う感じで玲央を照らしてて。  綺麗だなあ、なんて、玲央を見ても、思う。  そのまま、また花火に視線を移して。ほんの十五分位。  ただ見惚れて時を過ごした。  それからまたアナウンスの声だけが聞こえた。多分終了の言葉。  それが終わると、急に静かになった。 「――――……」 「終わりだな……どうだった?」  そう聞かれて、玲央を見上げる。 「……うん。めちゃくちゃ良かった。すっごい、綺麗だった」  じーんと浸りながら、玲央を見つめると。  ふ、と優しく笑った玲央に、ちゅ、とキスされた。 「はは。かわい。その顔見たくて連れてきたから」  すりすり頬を撫でられて、またキスされる。 「………………っ」  なんか、胸の奥が、きゅーと締め付けられるみたい。  ……大好きすぎて。 (2022/10/20) 後半に続きます♡

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