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第549話◇
座ってる玲央のとなりに二人が並ぶ。
玲央との写真撮影をめちゃくちゃ楽しそうに終えてから。
近くに二人を呼んで、静かに顔を見つめる。
「一樹 は、樹里 の漫画を大事にしなかった記憶ある?」
「……わざとじゃないけど……ある」
「わざとじゃなくても……そういう時は……?」
言うと、すぐに、一樹は樹里に、ごめん、と謝った。
「で、樹里はそれを一樹に言えばいいのに、お友達に伝えちゃったんだよね?」
「……うん。私もごめん……」
二人、ちょっと照れながらもちゃんと謝った。
「……プリンは、母さんが、父さんのだと思って、良いって言っちゃったんでしょ?」
クスクス笑いながら母さんを見ると、母さんも笑いながら頷く。
「そう、ごめんごめん。最初いらないって言ってたから、残してるの、お父さんだと思ったのよね。そしたらお父さん、その後食べちゃったんだって。……でもこの話、一樹にもしたよね?」
「ん。それはもう、分かってたけど……」
分かってたけど、最初怒っちゃってたから、意地の張り合いになっちゃったってことなんだろうなぁ。
オレは二人をかわりばんこにまっすぐ見つめた。
「じゃあ、もういつも通りでいい?」
そう言うと、二人、顔を見合わせてから、少しして、にっこり笑って、頷いた。
「あとさっきの玲央の写真は……見せるにしてもほんとに仲のいい子くらいにして。送信したりしちゃだめだよ? 玲央のこと知ってる人たくさん居るし」
「うん。分かってる」
「スマホで写真送る時は、お母さんに聞いてからって、ちゃんと守ってるもん」
一樹と樹里がうんうん頷くので、二人一緒によしよし、と撫でる。
「偉い偉い」
言うと、二人、嬉しそうに笑う。
「あっそうだ! 樹里ちょっと来て」
「うん、何々ー?」
二人が急ぎ足でバタバタ消えて行った。
ふ、と息をついて、玲央の隣に座ると、玲央がクスクス笑った。
「何?」
「いや。なんか、優月が、兄貴だなーと思って」
「――――……まあ……兄貴だからね、一応」
「ん。だな?」
なんだかやたら優しい瞳で見られるから、またドキドキしてしまう。
「二人は学部が一緒なの?」
母さんに聞かれて、「あ、ううん」と首を振る。
「学校内で知り合ったけど……学部は違うよ」
「そうなんだ。実家に付き合ってくれるなんて、ほんと仲がいいのね」
……確かにそうだよね。しかも喧嘩してるって分かってて来る時に、だもんね。母さんは多分まだ何の思いもなく、ただほんとにそう思って、言ってるんだろうけど。少し変にドキドキする。
「学部も違うし、タイプも全然違うんですけど……」
「……」
不意に、ドキドキしてるオレの横で玲央が、母さんに向かって話し始める。
「オレ、優月が大好きなんで。――――……お母さんや双子にも会ってみたくて。突然来てすみません」
玲央がそう言うと、目の前の母さんは、めっちゃ喜んでる。
優月が大好きっていうのも喜んでると思う。……わが子大好きな人だから。
プラス、こんなカッコいい人に、会ってみたくてとか言われて、嬉しくないわけない。
……玲央って絶対、心底タラシな気がする……。
でもまあ、別にこれくらいのセリフは……そういう意味で付き合ってなくても、勇紀とかも、優月大好きだからとか、普通に言いそうだし。
普通の言葉、なんだろうけど。
だから別に母さんも怪しんでる感じも全然ないし。
……なんか。
わー、なんか。
優月大好きなんでって、こんな風に言ってくれるとか。
……すごい嬉しいかもしれない……。やばい……。
なんか泣いちゃいそうなんだけどどうしたら…。
目の前でなんだかとっても盛り上がって話している二人に、なんとなく頷いて、話に入っているふりをしながら、泣きそうなのを我慢したりする……。
(2022/9/22)
いつきとじゅり。
読み方違ってる方居そうなので、途中ですが
書いときました……。
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