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第551話◇
「玲央、今、話してた。一緒に、暮らそうかなって……」
「ああ」
頷く玲央と視線を交わすと、母さんがすぐに玲央に向き直った。
「玲央くんの方は、良いの?」
「はい。……良いというか、オレから誘ったので」
玲央が母さんに向けて、まっすぐ、そう言った。
「優月が入ること、ご家族は何て言ってる?」
「まだ言ってないんですけど……今度、優月、とりあえずオレの祖父のところに一緒に行くんですけど。優月のこと、気に入ってるので、多分父も母も大丈夫だと……」
玲央の言葉に、不思議そうな母さん。
「優月、玲央くんのおじいさんも知ってるの?」
「あ、そう。久先生のお友達だったの。教室で会って判明したっていうか……偶然なんだけど」
「まあ……なんだかご縁があるのね」
母さんはクスクス笑いながら。
「もう大学生なんだし、一人暮らしは、優月が自立するためにさせたことだから。優月が決めたことなら、基本反対はしないけど」
笑顔で言ってくれるので、ちょっと安心しながら、聞いていると。
「マンションの方は、管理会社に聞いておくね。でも、暮らし始めてからまた、やっぱりやめようとかなると、結構手間だし……本当にお互いがいいのか、もう一度よく考えてみてね?」
そう言われて、玲央と二人、顔を見合わせてから。
「うん。……分かった」
「はい」
母さんの言葉に、頷く。
「――――……」
……玲央とのこと。
言った方がいいのかなと、ちらっとかすめるけど。
――――……今日は双子もいるし。時間も、無いし。
うん。今日は、しょうがない。
二人で暮らすって確定させる前に、ちゃんと話してからにしよう。
そう思って、その話は、終わりにした。
それから、一樹と樹里と話して、また来るね、と伝えてから、家の外に出る。玲央に絡みまくってる一樹と樹里に笑っていたら。
母さんがオレの隣に並んだ。
「優月、ありがとね、来てくれて。……まあ、二人で仲直りすればいいと思ってたんだけど……たまには喧嘩もいいかなって」
「うん。ありがたみがわかるかもね」
「でもまあ、楽しそうだから。来てくれて自然と話せてたし、良かった」
「そうだね」
笑って言う母さんに、オレもクスクス笑いながら、返事をする。
――――……母さんに、玲央のことを、ちゃんと話してないことが、今更少し胸にちくん、としたものを走らせるけど。
時間もないし、仕方ない。また、すぐ、来よう、と思った時だった。
「優月、あのね」
「ん?」
「毎日顔見れないから、これだけ言っとくね」
「うん。何?」
「お父さんと私は、子供たちの味方だから」
「――――……」
「何があっても、味方だからね」
「――――……え。……あ、うん……?」
頷きながら、思わず首を傾げてしまう。
「まあそれだけ。子供たちが信じて頑張ろうとしてることなら応援するし」
「――――……」
「それだけ覚えといて」
笑顔からは、何にも読み取れないけど。
めちゃくちゃ楽しそうな笑顔で、母さんが笑う。その瞬間。
「「ゆづ兄~」」
二人がぎゅー、と抱きついてきた。
「「またすぐ来てねー!!」」
こんな時ほど、余計シンクロしまくりの、二人。
抱き着いてる背中をポンポンしていると、玲央が笑いながらこっちを見てる。
「うん。わかった。またすぐ来るからね」
「「絶対だよ」」
「うん」
絡んでる二人と話しながら、車について、ドアを開けると、乗り込んでシートベルトをしながら、皆を見上げる。玲央がエンジンをかけて、助手席の窓を開けてくれた。
「じゃあ、またね」
母さんも近くでニコニコしてる。
「またね、優月。ちゃんと食べてね」
「うん。あの……」
「ん?」
「……また、玲央と、来るね」
そう言うと、母さんは、ん、と、オレを見つめてから。
ふ、と笑顔を浮かべた。
「分かった。今度は父さんも休みの時においで」
「――――……うん」
なんか、微妙すぎて。
……どういう意味なのかは、よく分からない。
――――……分かっているのか、分かっていないのかも。
よく分からないけど。
「ありがと」
言ったオレに、母さんがまた笑った瞬間。双子が窓の所に割り込んできて、タッチを求めてくる。
「「またね、ゆづ兄」」
「うん、またね」
「玲央くんもまたね!」
「バイバイ、また来てね」
一樹と樹里の言葉に、玲央も頷いてからハンドルに手をかけた。
「玲央くん、運転気を付けて」
「はい。また」
母さんに頷いて見せて、玲央が少し頭を下げてる。
皆に手を振りながら、車が発進して――――……少し離れて、すぐ。
「……優月、似てる」
クスクス笑う玲央。
「――――……オレそんなに子供、得意じゃないんだけど……」
「え、そうなの?」
そうは見えなかったけどな、と玲央を見ていると。
「得意じゃないつーか、あんまりかかわることもなかったというか?」
「あ、そっか……」
「……だけどなんか、優月が小さくなったみてえって思ったら、見た時から、可愛く見えて」
そんなに似てるかは、よく分からないのだけれど。
すごく嬉しいことを玲央が言ってくれている気がして、ついつい顔がほころぶ。
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