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第552話◇
「そんなに似てるかなあ……?」
「まだ二人は子供だからそこらへんは違うけど……まっすぐ見つめてくるとことか、素直な返事とか……」
玲央はひたすらクスクス笑って、楽しそうに続ける。
「可愛かったな。……優月の弟妹っていうのが納得」
「そっか」
一度頷いてから、ふふ、と笑ってしまう。
「なんか嬉しい。玲央が、二人を可愛いって思ってくれたのが」
「外見とか色々想像できてた訳じゃないんだけど――――……だけどなんか、予想通りって感じだった。こんな感じの雰囲気だろうなと思ってた、そんな感じ」
信号で止まると、玲央がオレを見て、クスクス笑う。
「お母さんも。――――……優月のお母さんって感じ」
「え、そうだった?」
「うん」
「……そっか……」
母さんもかぁ。似てるかなぁ?
どこらへんでそう思ったんだろ。
んー、と考えていると、玲央が笑った。
「柔らかい口調とか……雰囲気とか。似てる気がする」
「そう? ……んー、そっか。あんまり、家族と似てるって言われたことないから、ちょっと嬉しいかも……」
「優月……お母さんて、気づいてた?」
笑ってたオレは、ふ、と玲央を見つめ返した。
何に気づいてたかは言ってないけど、すぐに分かる位には、オレもそう思ってたから。
「……はっきり言わなかったけど……父さんと母さんは、子供たちが正しいと思って頑張ってるなら、味方だからって、言ってた」
「――――……ふぅん……」
玲央はクスクス笑いながら視線を前に戻して、車を走らせ始めた。
「……そういうこと、普段から言う人?」
「ううん。……普段一緒に居られないから言っとく、みたいなこと言ってたよ。多分、改まって言われたことは、ないかも」
「――――……それで、最後、お父さんが居る時においでって言ってたよな」
「……うん、言ってたね」
少しだけ間を置いてから、玲央は、ぷ、と笑った。
「バレてるかな。百パーじゃないだろうけど、ほぼそう思ってるって感じ?」
「……うん……そう、なのかな、やっぱり」
「まあ、わかんないけど……優月の家族は、優月が誰を選んでも、平気な気がした」
「――――……」
「オレに限らず、な? 優月が選んだ相手なら、良いって言いそう。……なんかそんな気がする――――……っていうか、なんとなく最初から、そう思ってたけど」
玲央がなんだか楽しそうに笑って、オレに一瞬視線を流す。
「優月の家族っぽかった」
そうかな、と言いながら、なんとなく。
玲央が楽しそうに言ってくれるから、そのまま頷いて。それから。
「……オレは、玲央が、いい」
「ん?」
「他の人じゃなくて……玲央がいいな……」
ちょうど信号で止まった時にそう言い終えたら、玲央と視線が合って。
ふ、と瞳が緩んで。と思ったら、ギアを変えて、サイドブレーキをかけると、オレの腕を引いた。
「――――……」
少しの間だけ。
キスされる。
前の車とかから、丸見えかなーとか、掠めて思うのだけど……。
……好きすぎて。いいや、と思ってしまう。
目の前のカッコよすぎる瞳が、また細められる。
「オレも、お前が良い」
「――――……」
そんな言葉に、じーん。と、浸っていると。
クス、と笑って、くしゃくしゃ頭を撫でてくれながら、玲央はすぐ姿勢を戻す。
「ああ、今の、誰を選んでもっていうのは、言葉のあやっていうか……優月の家族は、優月が選んだならいいって言いそうっていう、それだけだから」
クスクス笑って、玲央が、サイドブレーキとギアを戻す。
わかってるよ、と言うと、玲央は頷いて微笑む。
「こっからしばらくまっすぐだから。優月、手」
「――――……」
差し出された手に触れると、ぎゅ、と握られる。
「……手つないで運転とか。自分がするとは、マジで思わなかった」
「――――……それ言ったら、オレの方がだよ」
「ん?」
「手、つながれながら、男の人、好きって思うとは……玲央に会うまで、思わなかったよ」
思ったことをそのまま言ったら、玲央は、「確かにそうだな」と可笑しそうに笑う。
繋いでる手も、笑ってくれるのも、嬉しくて。
玲央が、オレの家族と過ごしてくれてたのも嬉しくて。
なんだか、ほんとに。
幸せだなーと、思いながら、繋いでいるその手を、すりすりしてみる。
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