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第576話◇

 授業が始まる前、女子に囲まれて、なんだかんだと誘われた。  適当にかわしている間に教授が入ってきて、皆席に着く。  セフレは解消したけど、そういう関係を持ってない相手は、普通に声をかけてくる。二人でどこかに行こうとかではなくて、何人かで遊ぼう、ていうのが多いから、その内な、的に返していると、大体終わるけど。  まあ、そういう意味で相手にはしないとして。  ――――……どうなんだろう。  今まではそういう相手は恋人ではなくて「セフレ」だったし、その集まろうの内容が面白そうなら、特に気にせず参加したりもしていたけど。  優月とは、恋人、になったから。  ……オレに気のある女からの、とりあえず皆で遊ぼうっていう誘いに乗るのは、どうなんだろうと思ってしまう。  実際、そういうのに行って、セフレになった奴も居るから、向こうはその気だったりすることもあるし。  でもそういうのの相手をしないって決めて行くなら、別に、男友達らも居る訳だし普通なことの気もする。  優月以外の誰とも付き合わないっていうのも不自然な気もするしな……。  そもそもきっと、優月だって、仲いい奴多そうだし。  オレが他の誰とも出かけなかったら、優月だって、遊びに行き辛いと思うかもしれないし。……ていうか、きっと、思うよな。  だから、オレがずっと、優月と居たいとか言ってたらダメなんだろうと思うけど。……分からねえな。  普通に恋人が居る奴らって、他の女が来る遊びとか、どーしてんだ?  ……そういう意味がなければいいのか??  でも過去、付き合ってた時、全くその気なく普通に遊びに行っても、そこに女子が居たら、大体そん時の彼女には嫌がられたよな。  優月が嫌がる気は、しねえけど。  でもそれはオレに言わないだけで、ほんとは少しは、嫌とか?  ……いやでも、優月は――――……。  しばらく、うーん、と考えながら。  ノートだけ、目で追って写していたのだが、ふと、オレは何を考えてるんだろうと、我に返る。  ……マジで気にしたことがなかった、こんな類のこと。  別に優月に言われたわけでもないのに、気にして、延々一人で考えてるとか。……むしろ彼女に言われても、関係ないって言ってるのにとムカついただけだったのに。  ――――……オレ、ほんとに優月のことが好きなんだろうな。  嫌なことして、嫌な思いさせたくないとか、  嫌われたくないとか思ってるんだろうな……。  何だか、しみじみと、そんな風に思ってしまう。  大体、優月が、そんなことで文句言うとは思わないし。  セフレすらオッケイみたいな感じだし……。  こないだも、稔が「玲央が浮気したら?」て聞いた時も、なんか、普通じゃない回答してたしな……。 「できたら玲央と別れたくない」とか「浮気しないでもらえるように頑張る」とか言ってたっけ。  綺麗ごとじゃなくて、本気で言ってるっぽいのが、すごいと思う……。  つか……可愛いし。  文句言うとは思ってないのに、オレの方が気にしてるとか。  優月と居ない時にまで、優月とのことをいつも考えてて、どうした方がいいかとか考えたりしていて。  今までと違いすぎて、自分ですら、ちょっと可笑しい。  

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