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第577話◇
【side*優月】
おいしいアジフライだったな~
玲央のお皿ちらっと見たけど、結局アジフライ食べたみたいだったし。
ふふ。勇紀も食べてたし、オレの周りもアジフライ食べてたな。
面白い。なんか幸せ。
なんて思いながら、教室まで歩いていると。
「優月―!」
明るい声に振り返ると、案の定、美咲で。
美咲は一緒に居た女の子に、先に行っててと言って、オレのところに駆け寄ってきた。
「なーんか、一人で幸せそうに歩いてるけど」
クスクス笑う美咲に、苦笑い。
「ああ、なんか……アジフライ定食食べてる人が周りにたくさん居たなーって思って」
「何それ?」
「とにかく、アジフライだらけだったの、お昼」
「ますます何それ」
余計に、笑われる。
「あ、ねえ、優月、智也から連絡きたんだけど……夕飯食べに行くの、水曜でもいい?」
「うん、多分大丈夫。玲央にも一応聞いてみるね」
そう言うと、美咲は、ふ、とオレを見る。
「その感じだと、ずーっと一緒に居る?」
「……うん、居る」
「今優月のマンション、帰ってないの?」
「うん。玲央んちに、居るよ」
「ふうん……そうなんだ」
クスッと、美咲が笑う。
「聞きたいこと、やまほどあるけど……」
「え」
「時間ないから、ごはんの時にするね」
「う、ん。分かった」
ちょっとドキドキしつつ、なんだかすごくニコニコしてる美咲に頷く。
すると、美咲は、「なんか、優月さぁ」と言いながら、さー、と頭から下まで、視線を走らせる。
「それって、神月のセンス?」
「え。あ。うん、上の服はそう」
「なんかね、あたしずっと思ってるんだけどさぁ、女子ってね」
「うん?」
「彼氏が良い人で幸せだと、なんか可愛くなるんだよね。それってさ、別におしゃれしようと、特別頑張ってなくても、そうなるの。……と、思ってるのね、あたしは」
「うん……?」
美咲は、オレをまっすぐ見つめて、クスクス笑った。
「優月を見てたら、それって女子だけじゃないんだ、と、ちょっと思っちゃった」
「――――……」
「って、それは、どういうことでしょうか?」
にこにこ笑って、オレを見つめてくる美咲。
え。えと。どういうことでしょうか???
……可愛くなるのが、女子だけじゃない、てことは……?
「それって……オレが可愛くなってるってこと……???」
「せいかーい」
クスクス笑われて、「からかわないでよ」と苦笑すると。
途端に真顔で。
「からかってないよ。なんか可愛くなってる、優月。服も、優月に似合ってるけど、多分優月は買わない服だよねって感じ。ってことは、神月は、ちゃんと、優月に似合うってものが、分かってるんだなあと思って……」
「――――……思って、何??」
途中で止まった美咲の言葉を促すと。
「思って……ちょっと、安心、しちゃった、ていうのが、正しい、かな」
「――――……心配、してる?」
「うーん……心配してたつもりはなかったんだけど、なんか今自然に、安心したっていう言葉が出そうになったから。まだ、してたのかも」
少し、困ったみたいな笑顔。
「――――……なんか、ごめん。心配しちゃってて」
美咲はそう言うけど。なんだか、嬉しくなってしまう。
「心配してくれて、ありがと、美咲」
なんかほんと。
ありがとう、としか、思わない。
笑顔で、そう言ったら。
少し困った顔をしていた美咲は、オレを見て、すぐに、いつものキラキラ笑顔に戻った。
「ん」
美咲は短く頷いてから、「ありがと、優月」と言って、オレの背中をポンポンとたたいた。
「じゃあ、水曜のこと、決まったら教えて」
「うん、分かった。またね」
美咲は、バイバイ、と手を振って。長い髪を揺らして、走り去っていく。
その姿を見送りながら。
ついつい、微笑んじゃうのは。
しょうがないよね。
なんか、嬉しいし。
(2022/11/1)
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