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第579話◇
今日はピザを作ろうってなって、ピザ生地二枚と具材を買ってきた。
おなかすいたし、先に作ることになって、玲央とキッチンに並んだ。
「オレ、ジャガイモむくね。レンジであっためちゃう」
「ん。そっちがジャガイモと玉ねぎとソーセージだろ?」
「うん、あと、しらすと小葱だよね」
「ジャガイモの方はマヨネーズ?」
「んー……うん、マヨネーズがいいかなあ?」
「じゃあそっちは決まり」
そう言ってから、玲央は、んー、とオレを見つめながら。
「しらすと小葱は? 味、何がいい?」
「んー……和風っぽいよねぇ……」
なんだろうなぁ。マヨもケチャップもなんか違う気がする。
「オリーブオイルだけ塗る?」
玲央を見上げながら、そう言うと。
「そうだなぁ……」
と、玲央が結構真面目な顔で、考えてる。
ふふ、と笑いながら、玲央の答えを待っていると。
「柚子胡椒とかは? うまそうじゃないか?」
「柚子胡椒……」
味を想像してみる……。
「オリーブオイルと柚子胡椒塗って、チーズとシラスと小葱。どう?」
玲央の笑顔に、オレも、うんうん頷いた。
「めちゃくちゃ美味しそう」
「ん」
「作ろう作ろう」
ウキウキしながらジャガイモの皮を剥きだすと、横でクスクス笑っている玲央に、顔を覗き込まれた。
「上向いて?」
「?」
上を向くと、なんだかすごく優しい顔してる玲央に、ちゅ、とキスされる。
うわ……。
「――――……」
柔らかく触れて、触れると同時に、目が細められる様を、間近で見てしまったオレは。
多分、一瞬で、真っ赤になった。
心臓が一気に速くなって、顔、熱くて。少し離れた玲央は、オレを少しびっくりした顔で見下ろしてから、クスクス笑いながら、頬にキスしてきた。
「……可愛すぎ」
結局、食材を手放して、玲央はオレを抱き寄せて、頬に触れて、またキスを重ねる。
「――――……」
舌が優しく触れてきて、優しく、噛まれる。
「……ん……」
なんだかもう、すでにオレ、溶けそうなんだけど……。
思った時、そっと離された。
「――――……ここでやめとく……ベッドに連れ込みそうだから」
すり、と頬を撫でられて。
「トロトロしだしちゃったし。優月」
ちゅ、と頬にキスされる。
……それは、でも……オレのせいじゃないんだけど……。
なんて思って、玲央を見つめて返していると。
「ごめん」
クスクス笑われる。
「……?」
「オレのせいって思ってたろ」
……何で分かるんだろうか……って、別に玲央が悪いなんて言ってるわけじゃないんだけど。
と色々思ってると、玲央がますます笑う。
「ごめんって、悪かった。ピザ作ろ?」
何だかすごく笑われてるけど。
……すごく楽しそうだし。優しい顔で笑ってるので。
全然いいか。なんて思いながら。
ジャガイモをむき始めると、玲央は、冷蔵庫に向かいながら。
「優月にキスすると、可愛くて、だめだなー……」
なんて言ってて。
……恥ずかしいというか。……嬉しいというのか。
なんとも言えない気分で、ジャガイモをむき続ける。
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