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第614話◇
翌日、火曜日。
朝、珍しく玲央より早く起きた。なんかすごく嬉しかったりする。
……抱き締められてるんだなぁ、オレ……。
いつもこうなのかな。……多分、そうなのかな。
なんか、嬉しい。
玲央に抱かれて、オレが先に寝ちゃって……多分、後始末してくれて。
その後、寝てるオレを抱き締めてから寝てくれてるんだと思うと。
すごく嬉しくなってしまう。
動かないように、そっと玲央を、見上げる。
すやすや寝てる玲央、かわい……。
はっ。これって、ものすごく、貴重なのでは……。
そうだよね、オレ、玲央より早く起きるってなかなか無いんだから、絶対すごく貴重……。
満喫しようと思って、もう一ミリも動かない、と心に決めて、目線を上にあげた時。
今一瞬目を逸らす迄は確かにすやすや眠っていた玲央の瞳が。
ぱち、と開いてて、ばっちりと視線が絡んだ。
え。
「――――……」
しーん。
……特に何も言わず、見つめ合うこと数秒。
玲央が、ふわ、と微笑んだ。
「……どうした?」
少し掠れた寝起きの声。
……何だか、オレの心臓への、破壊力が、すごい。
「……寝づらかった?」
オレの頭の下にある腕を少し動かして、そのまま、オレのことを引き寄せて腕の中に抱き締める。
…………っ。
朝から、甘々すぎる雰囲気に、ドキドキしまくりで、玲央の胸に収まる。
「ごめん。可愛くて、ついつい……」
……ごめん??
……あ。寝づらいを否定してないから、謝られてしまった。
「違う、寝づらいんじゃないよ。嬉しい」
玲央の背中に手を回して、ぴと、とくっつく。
……あったかいなあ。玲央。
くす、と笑う気配がする。
それだけで、とっても幸せな気分。
「よく寝た?」
「……うん、寝た。ぐっすり」
「なら良かった」
クスクス笑う玲央に、ぎゅー、と抱き締められる。
寝起きの少し掠れた声。……あんまり聞かないから、これもすごく、貴重かも……。
「今日は夜までは別々だな」
「うん。頑張ってね、曲……」
「ん。優月も絵、頑張れよ」
「うん」
今日は四限までで、その後絵画教室で、蒼くんとご飯食べて、玲央のもういっこのマンションに行く。色々あるなぁ、今日。
「なあ、優月」
「ん?」
「描いた絵さ」
「うん」
「写真撮ってきて?」
「え? オレが教室で描いた絵?」
「ん。見たいから」
「――――……見たい?」
「見たいよ」
「……ほんとに?」
言うと、玲央は、クスクス笑いながら、オレを覗き込んでくる。
「ほんとに決まってるし。優月が何描いてるのか、見たい」
「――――……」
「ていうか、見たくなかったら、言わないって」
……わあ。なんか。
…………すごく嬉しい。
描く絵に興味持ってくれて、写真撮って見せて、とか。
…………こんな嬉しいこと、あるかなて、思ってしまう位。
……今嬉しい。
ふふ、と笑ってしまうと、玲央が不思議そうに、優月?と聞いてくる。
「ううん。分かった、写真、撮ってくるね」
「ん。これから毎週な?」
「そんなに見てくれるの?」
「優月の絵フォルダ作るから」
「……ふふ」
うんうん、と頷いて、玲央を見上げて笑うと。
ふ、と笑んだ玲央にちゅ、とキスされる。
なんか、心がポカポカ気分で。
そっと離されるまで、玲央の腕の中に収まっていた。
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