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第717話◇
食事を終えて、オレのマンションにやってきた。車は、来客用の駐車場が空いてたのでそこに停めて、部屋に向かう。
少し前までは、毎日帰ってた自分の部屋。久しぶりな気がして、中は平気かなぁと思いながら鍵を開けた。
ドアをあけて中に入ると、少し、空気が澱んでる気がする。
「窓開けてくるね」
リビングの電気をつけて、部屋の窓を開けて回る。雨は止んでたのでちょうどよかった。
「なんか閉め切ってるから、変なにおいするね」
「開けないとそうなるよな」
途中で買ってきた、明日の朝ごはんとか、飲み物を片付けながら、隣に居る玲央を見上げた。
「玲央、先にシャワーあびちゃって?」
「一緒に入んねえの?」
「えと……あの、狭い、から」
「いいじゃん、狭い方が」
狭い方がってことはないと思うんだけど。
「くっついて入ろ?」
クスクス笑う玲央に、えーと、と固まる。
「でも……写真とか、見る、でしょ?」
くっついて一緒に入ったら、きっと、色々、なるでしょ?? とは言えず、それだけ言って、玲央の返事を待っていると、玲央がクスクス笑いながらオレの頬に手をかけた。
「――――……」
ちゅ、と頬にキスされる。
「ベッドまでは、我慢する」
「――――……っ」
どうしてそんなに、強烈な、キラキラな瞳で、見つめてくるんだろ。
……もう。ほんともう、すぐ、顔、熱くなる。
「写真見に来たんだもんな。あと、引っ越し。荷物どれくらいあるかも見ておこ」
「あ、うん」
スリスリしながら頬から手を離して、オレを見つめる。
「じゃあ先にシャワー浴びてくる」
「うん。バスタオルとか用意するから、入ってて? 服は……?」
「持ってきた。タオルだけ貸して」
「うん、持ってくるから入っててね」
「ああ」
玲央が持ってきた鞄から部屋着を取り出してるのを見つつ、タオルを取りに歩きながら、ふと考える。
玲央のマンションに比べると格段に狭いもんね。お風呂も玲央のところ、めちゃくちゃ広いし。
なんかもしかして、玲央って、こんな狭いところに居るのって、もしかして初めてかな? とか疑問が浮かぶ。どう思うんだろう??
なんか……そういうの考えると、玲央とオレって、やっぱり、色々違うのかも。
あれだなあ、オレがもし女の子だとしても、身分が違うーて悩みそう。
オレとじゃ、男同士だし、身分もだし。色々違いすぎて、なんかもう逆にあんまり考えてないような。
……身分って言ったら玲央、笑いそう。でも、やっぱり、暮らす世界が大分違う気はするけど。
あ。そっか。蒼くんもそんな感じしてたから、ちょっと慣れてるっていうのはある気が。
もしかしてオレ、蒼くんで慣れてたから、玲央のあの感じに、気後れしなかったのかも? なんかそんな気がしてきた。
玲央は。
クロに話しかけてる声を聞いた時から。
なんか、胸がドキドキしたんだっけ。優しい声でクロに話しかけてるのが、どんな人か見たくて、
……いきなり、キス、されて。
セフレがいいとか、良く分かんないことまで言って。
色んなこと話して、あれからずっと一緒に居るけど。
会った時からずっと、玲央が好き。だなぁ。
ふふ、と笑ってしまいながらタオルを持って、バスルームに。
「玲央、タオル置いとくね」
「ああ。ありがと」
……なんかオレの家のお風呂から玲央の声が聞こえるとか。
すっごく嬉しいなあ。
なんかもう、勝手に微笑んでしまう。
あ。とりあえずコーヒー淹れとこ。
もうすっごくウキウキしてしまいながら、コーヒーの準備を始めた。
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