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第739話◇
瞳、潤んでるし。と心配になりながら、でも可愛いなと思って、背を支えた。
「ほんとは呼ぼうかなって少し思ったんだよ……最初は、どういったらいいか分かんなくて」
「呼べばよかったのに」
「でもなんか、悪いなって思って……言い訳してもらう、みたいで」
困ったみたいに言う優月に、オレは少し考えてから。
「でも自分の過去の行いが悪かったってことだし。もう、言い訳というか、今は違うって言うしかないことだからな」
「……別に、玲央は悪くないし」
「……そうか?」
あまり世間に大声では言えないようなことしてた気がするけど。
「だって、相手も納得して、玲央と居るの楽しんでただけだし……悪くないし」
ぎゅ、と抱きつかれて。そんな風に言われると。
……可愛いなと思ってしまう。
「でも、玲央が、呼べばいいって言ってくれるの、すごく嬉しかった」
そんな風に言って、ちゅ、と頬にキスされて、同時に首に絡んだ腕を解かれる。
「……ありがと、玲央」
ふ、と笑んで、離れてこうとする優月の腕を取って、引き寄せる。
「――――……」
ちゅ、と唇を重ねた。至近距離で見つめると、なんかウルウルしてる瞳がほんと可愛く見える。
「……玲央」
「ん?」
「……大好き、玲央」
嬉しそうに笑う優月が可愛い。ふに、と頬に触れて、頬にもキスをする。
「ごめんな……優月に嫌な思いさせて」
「……」
ぱ、とオレを見て、優月がプルプル首を振る。
「嫌じゃないよ。全然。あ、ちょっとは困ったけど。でも」
「――――……」
「嫌とかじゃなかった。……心配してくれる春さんも好きだったし、今、噂とは全然違ってオレと居てくれる玲央が、大好きだし。……ていうか、今もそんな風に、言ってくれて、嬉しいし」
普通は、嫌なことだろうと思うのだけれど。
でも、優月は、すごく嬉しそうに、オレを見つめる。
「大好き」
ぎゅー、としがみつかれるとか。
……もうこれ、可愛いしかないんだけど。オレ。
「――――優月」
ちゅ、と頬に口づけて。
「とりあえず、帰ろ」
「あ。うん、そうだよね」
めちゃくちゃ、くっついちゃってごめんねと、少し慌てたみたいに言って離れる優月。
「ああ、そうじゃなくて……可愛すぎてヤバいから、早く帰りたいなと思って」
「……?」
「優月、大学の駐車場なんかで、車でシたくないだろ?」
「したくない……?」
「このままくっついてたら、押し倒しそうだから」
反応はもう分かってたけど、あえてそう言ったら。
数秒後、予想以上に真っ赤になった優月は、何やらぷるぷる小刻みに首を振っている。
こういうとこがなー……小動物みたいに見えるんだよな。
くっと笑ってしまうと、あ、からかってる、とばかりに、むー、と膨らんでる。
いくら外から見えにくい窓だからって、こんなところでシないけど。
万が一にも優月を見られたくないし。
でもなんか。
恥ずかしそうにする優月、可愛くて見たいなとか思うオレはヤバいなという自覚はある。
(2023/9/26)
◇ ◇ ◇ ◇
なんとなく日々何かしら更新してたのに、昨日は残業やら病院やら忙しすぎて更新できませんでした~💦
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