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第762話◇
驚いてる希生さんと。
何で驚いてるのか、なんとなく察してるっぽい久先生と蒼くん。
……と、なんとなく居心地悪そうな玲央。
……なんか可笑しい。
ふふ、と笑ってしまう。
全部言いたいなあ。
玲央がほんとに色々してくれることとか。ちゃんとしてる感じとか。
多分、この感じだと、希生さんは、知らないのかな。希生さんの知ってる玲央って、どんな感じなんだろう。詳しいことは分かんないけど、全部話したら、本当にびっくりしそうな感じではありそう。
ちょっと面白いなと、ニコニコしてしまっていたら、玲央にちら、と見られて。なんか、玲央は苦笑いしてる。ふ、と笑ってちょっと首を傾げると、またクスクス笑われる。
オレが面白がってることは分かってるのかどうか。
あとで二人になったら聞いてみよ。
そんなことを考えている内に、一通り運び終えたのか、お手伝いさんたちが居なくなった。
……ていうか。
自分のおうちにお手伝いさん。
想像つかない世界というか。テレビとか映画で見たような世界って、ほんとに存在するんだなという感想。ふむふむ。なんか。色々新しいことばかりで。
なんか。色々楽しすぎて。
来てからずっとテンションが上がってる。
「食べようか」
希生さんが言って、皆で頂きますと言って食べ始めた。
「……美味しい」
なんかとっても美味しい。
薄味だけど、なんかふかーい感じ。ダシ……かなぁ。
玲央はいっつもこういうの食べてたのかな。
習ってただけじゃなくて、そうだから、余計、作るものも美味しいのかなあ。
んん? オレの作るもの、美味しいのかなっと、ふと気になって、隣の玲央に視線を向けると、オレを見て、「美味しい?」と笑う。うんうん頷くと、「茶碗蒸し食べてみな。優月、好きだと思うから」と言われる。うん、と頷いて、茶わん蒸しの蓋を開く。
「……おいしー」
一口食べて……それしか、出てこない。
「だろ」
と玲央が笑う。
「優月、顔」
「ん?」
「緩みすぎ」
笑いながらの蒼くんからそんな言葉が飛んできて、え、そう?と玲央に確認すると、玲央はちょっと苦笑して。
「大丈夫。……和むから」
……和むから。
…………和む。はいいのかな。希生さんの前でも。
普段だったら、きっと可愛いとか言ってくれちゃいそうな玲央の雰囲気だったけど、多分、気を使って…… 出たのが「和む」。いいのか良く分からないのだけど、一瞬で色々悩んでいたら、久先生が、クスクス笑いながら、オレを見た。
「分かる。優月、和むよねぇ」
「はい」
久先生を見て、玲央が、にっこりしながら頷いている。
……変な会話だけど。
なんか。……久先生と、玲央が、話してる。
今更なんだけど、縁って不思議。
ずーっと昔から知ってる、久先生と蒼くん。ただのお絵描き教室の先生とその息子の、高校生のお兄ちゃんというだけの関係の筈だったのだけど。でも、なんだかんだと蒼くんが構って可愛がってくれて、久先生も、なんだか孫みたいに可愛がってくれて。生徒として、というよりももっと深く、関わってきた気がする人達。
玲央とは、まだ会ったばかり、と言ってもおかしくない位なのに、こんな風にずっと一緒に居て、一緒に暮らそうなんて言い出してて。
そしたら、その玲央のおじいちゃんの希生さんが、久先生と、学生時代からの親友で、蒼くんも一緒に旅行に行ったりしてる人で……。
その人達みんなで一緒に、希生さんのお家でごはん。
……自分の中で、ちょっと整理してみたけど。
やっぱりなんか、めちゃくちゃ不思議。
人の縁って。
本当に、運命って感じ、だなぁ、と思う。
向かい側の三人を見てから、玲央で視線が止まる。
「ん?」
にこ、と笑ってくれる玲央に。
一緒に居られて嬉しいなと思って、大好きと言ってしまいたいのだけど。
ううん、と首を振る。
ここに居るのはかなり不思議だけど、玲央と居るのは、なんだかいつも通り、て思うのが、自分で嬉しい。
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