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第768話◇
「じーちゃん、オレ、もう二十歳超えたし。いつまでも子供じゃねーから」
「ふうん……?」
「……あと最近、ちょっと落ち着いたから」
希生さんにそう言ってから、オレを見て、な?と笑う。
「うん」
こくこく。頷いておく。
……正直、前の玲央は知らないのだけど、まわりの皆の言ってることとか聞いてると、きっと、そうなんだと思う。
あと。一番最初に会った頃の、玲央とも、もう大分、違うのは、オレも知ってる。
「そのまま落ち着けばいいけどな」
「落ち着くから。大丈夫。安心しててよ」
「――――……ふうん?」
希生さんが何だかニヤニヤして笑ってて、玲央は、べ、と舌を見せてる。そんな玲央に、希生さんは苦笑い。
オレを挟んでそのやり取りがされているので、なんとなく、しゃべってる方を見ながら、聞いていたのだけど。
「優月が困ってるから、挟まないで、二人でやったら?」
久先生が笑いながらそんな風に言うと、希生さんと玲央二人にぱっと見られて、二人と目を合わせながら、首を横に振る。「困ってないですよ」と最後は希生さんを見ながら返す。
すると、オレを挟んでた二人は同じタイミングで、クスクス笑った。
玲央が前にあるアルバムの一冊を取って、オレの方に開いてくる。
「優月、これ。体育祭」
「わ。体操着着てる」
「……そりゃ着るだろ」
オレの妙な感想に苦笑いの玲央。
苦笑いされて、はっと気づく。
そりゃ着るよね、体操着。
だってなんか、ものすごく貴重なんだもん。体操着なんか、多分二度と玲央が着ること無いだろうし。
「ハチマキ、似合うね」
「リレーん時だな」
めちゃくちゃカッコいい。
絶対絶対、モテただろうなあ。……彼女の子たちが嫉妬に燃えちゃうのも、なんか分かる気がする。
アイドルみたいだもんね、高校の玲央。周りにいる、Ankhのメンバーもやっぱり高校生ってすごく若い感じがして、キラキラしてるなぁ、なんてしみじみ思う。
「皆カッコいいね」
「そうか?」
「うん、すっごくかっこい……え、これって稔??」
「……ん?」
オレが指さした、ちょっと衝撃な写真を覗き込んで、玲央がプッと笑う。
「ああ、そうだな」
カッコいい玲央達の横になぜか、枝豆の着ぐるみの稔が写ってる。
「確かに居たなぁ、枝豆」
希生さんも思い出し笑いで、クックッと笑ってる。
「え、何で枝豆なの??」
「さあ……リレーって全員リレーじゃなくて、足が速い奴だけだったんだよな。で、それぞれ応援団が作られて、めちゃくちゃ応援合戦、してたんだけど……オレの緑チームの応援団、団長が稔でさ。まあそういうの好きな奴だし、割と真面目なとこあって、めちゃくちゃ一生懸命考えて……」
「考えて……?」
「何でか枝豆になってた」
ふは、と吹き出した玲央に、オレも、もう無理。
我慢できなくて、大笑い。
何で真面目に考えて枝豆なんだろう?
もう、なんか、走ってる写真にも、枝豆姿の稔が一生懸命応援してるのが写ってて、もう、腹筋が痛すぎる。
やばい。止められない。 もう稔~!! もーなにしてんの~!
過去の稔に、笑いながら、呼びかけてしまう……。
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