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第782話◇
「あ、そうだ。希生さんが撮った、玲央の赤ちゃんの頃の写真、見ました」
「ああ。見たんだ?」
はい、と頷きながら、可愛かった玲央を思い出す。
「めちゃくちゃ、可愛かったです」
「まあ、赤ちゃんの頃は、本当、天使だったね」
クスクス笑う希生さんに、蒼くんが「赤ちゃんの頃は、て」とツッコミを入れている。
「何歳くらいまで可愛かった?」
「そうだな」
蒼くんの質問に、希生さんは少し考えてから、ふ、と微笑んだ。
「孫だからな。……正直、生意気になってからも可愛かったかもな」
「はは。そうなんだ」
「玲央には言うなよ?」
希生さんの言葉にクスクス笑って、蒼くんが頷いてる。
「父さんが優月を可愛がってンのと一緒かな」
久先生と希生さんを見比べてから、蒼くんがオレを見て笑う。
「孫みたいな感じだもんな、優月」
確かに、ほんとのおじいちゃんみたい、て思って、るけど。
「なんか、このままいくと希生さんも、優月を孫化しそう」
「孫化って……」
そんな言葉無いよね? と蒼くんを見上げると。
「だって、さっきから話してたら、ほんと、優月くんは可愛らしいなってずっと言ってるし」
「え」
可愛らしいって。
……可愛らしいってあんまり言われたことない言葉だなぁ、と希生さんを見ると、希生さんは苦笑い。
「蒼、ばらすなよ」
「いや、どうせバレるって」
クスクス笑う蒼くん。
「まあ……大体にして、優月は誰にとってもそんな感じって気もするけど」
そんな風に言いながら、オレを見て、ふ、と笑う。そうかな?? と、オレが何て応えていいか分からずに蒼くんを見ると、久先生が笑い出す。
「人のこと言えないよ。蒼が一番なんじゃないの」
「別に一番ではないし」
「そうかなあ。普通、行かないよ、よその子の学校とか」
久先生が笑いながら言うと、希生さんもニヤッと笑う。
「実の兄弟のだって行かないかもな、学園祭とか」
「……そこはむしろ、実の兄弟じゃないから行くんじゃねえの? な?」
「え。んー……オレは、双子の学校、行ける時は行っちゃってるかも……」
「あ、そ……」
クスクス笑う蒼くんと、そのやり取りを見て笑ってる希生さんと久先生。
なんだか。……穏やかだなあ。ほんとに。話しててほんとに落ち着く。久先生が独特にそういう感じで優しいのかと思っていたんだけど。……タイプ、違うのに、話してる時の空気は似てる。……好きだなぁ、としみじみ。
……蒼くんはまあいつもどおりたまにつっこんでくるけど。と可笑しくなりながら、蒼くんをつい見ると。オレと目があった蒼くんは、あ、そうだ、と立ち上がった。
「写真撮ってやるよ」
「え?」
「二人で連弾してるとこ。一緒に弾くことはあっても、自分たちじゃ撮らないだろ?」
うん、撮らない。というか、撮れないし。
蒼くんの言ってくれたことが分かると、めちゃくちゃ嬉しくて、一気にテンションがあがった。
「え、いいの?」
「いいから言ってるし」
「わあ、嬉しい。ありがと、蒼くん」
嬉しすぎて、蒼くんを見上げながらそう言ったら、真顔でじっと見下ろされて。ぷ、と笑われる。
「そこまで嬉しい顔されるとは思わなかった」
クスクス笑いながらそう言って、少し離れて行って、荷物から、カメラを取り出して、戻ってきた。
「任せろ、売れるくらいイイ写真、撮ってやるから」
「うん」
蒼くんがそう言うからには、絶対そうなんだろうなと。
すっごく楽しみすぎる。
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