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第813話◇

 オレ、こんな感じじゃ無かったのに。  ……玲央とするうちに、どんどん……。  うーんうーんうーん。  ……別にそれが嫌な訳じゃない。  玲央が好きだし。玲央としたいってことは、健全だと思うし。  でもでも、玲央が全然意識してない時に、オレの方がそんなことばっかり意識しちゃってるのは、なんかどうなのって思うんだよう。 「入っていいか?」 「うん。どうぞ……」  すすす、とずれて、広いお風呂なのだけど、結構な端まで寄る。  玲央が中に入って、自然とふー、と息をついた。 「広いと気持ちいいな」 「ん……」  こくこくこくと、頷く。……カッコよすぎて困る。……カッコよいっていうか。……好きすぎて。困るというのかな。  世にカッコいい人はたくさんたくさんいると思うけれど。  ……玲央のこと、大好きすぎて。  ……わーん、もう。好き……。  ドキドキしちゃうんだよね、もう。ほんと、のぼせる……。 「あんまり沈みすぎてると、のぼせるぞ」 「ん」  こくこくこく。  埋まったまま、頷いていると、オレを見ていた玲央が、少し首を傾げてから、ふ、と笑った。 「おいで」 「え」  くいっと引かれて、引き寄せられてしまう。  ぎゅ、と抱き締められて、わぁぁ、と焦る。 「優月」 「――――……っ??」 「よくわかんねーけど」 「……っ」 「変なこと、しないから」  クスクス笑う玲央に、よしよし、と頭を撫でられる。 「警戒しなくていいよ」  強張ったまま玲央の腕の中に居たオレは、あやすみたいによしよしされて、見つめられる。 「――――……」  うう。  ……なんかもう、ほんとにもう、玲央。 「好き」 「――――……ん?」  くす、と玲央が笑う。 「……違うの」 「ん? 何が?」  顔を覗き込んでくる玲央の顔が優しくて。  ……うう。 「あの……してほしくないんじゃなくて」 「ん」  不思議そうな顔。 「……してほしいなって、思っちゃってるの。こんなとこなのに」  ぷしゅうーーーと湯気が出そうな。ていうかもうほんとに出てる気すらする。お湯に埋まりすぎててのぼせてるし、恥ずかしすぎること言ってるし。   「分かってる、希生さんちだから無いって……でも、玲央が好きで」  うう。何言ってんだろ、オレ。無いんだから言っちゃだめだし。わー、恥ずかしいー。  ぎゅうう、と玲央にしがみついて、顔を見られないように隠れてると。  少しの間玲央から返事が無くて。 「……?」  玲央? と思った瞬間。  はー、とため息をついた玲央。えっと、固まるオレ。 「――――……っ」  わーわー、ため息つかれたー。 「ご、ごめん。へんなこと、いって」  離れようとした瞬間。   むぎゅ、と抱き締められた。    

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