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第817話◇
【side*玲央】
玲央、カッコいいとめちゃくちゃ笑顔で言った後。
優月は、絵を眺め始めた。
オレは、何度も見たことのある絵。たまに少しずつ違う絵に入れ替わってるみたいだけど、そこまで必死に見てないから、はっきりは覚えてない。あったようななかったような、みたいな感じのも結構ある。
優月は、まっすぐな瞳で、真剣。
ぼーっとするから戻っててもいいよ、とは言っていたけれど。ぼーっとしているというよりは、ただ、集中してる。
「――――……」
優月のことが、好きだ。
最初の頃、見た目は普通、とか言ってたけど。……なんかもう、好きすぎて、世界で一番可愛いんじゃないかと、思ってる気がする。
目もくりくりしてて、唇もふわふわしてて、ちょっとむーとされると、キスしたくなる。頬は柔らかくて、ずっと触ってたい、とか。肌の触り心地も好きだし、すべすべしてて、可愛い。
全部口に出したら、気持ち悪いと思われたりして。なんて思うことを、普通に思っている。
オレは優月が言うことも、することも、雰囲気すら好きだけど。
今日、ここに連れてきて、多分もうじいちゃんも、優月を好きだと思う。
オレと優月の関係を、というか、オレが選ぶ相手を、多分じいちゃんは反対はしないだろうと思ってたけど、それでも、優月を気に入るかどうかで、少しは対応が変わるかも、とは、心のどこかで思ってた。
久先生と蒼さんはもう言うまでもなく、優月を可愛がっているから、きっといい雰囲気で居られるかな、とは想像していたのだけど。
多分、それも関係なく、じいちゃん自身が、優月を気に入ったんじゃないかと思う。
次の絵に進んでく優月の後に付きながら、ふ、と笑ってしまう。
鯉の時点でもう、可愛いって思ったんだろうな、じいちゃん。ずっと鯉の説明してたし。なんかもうその後も、ほんとの孫みたいに可愛がってる気配を醸し出してたし。
……まあ、なんかすごく、分かる。
優月、あのくらいの年代の人に好かれそう。……ていうか、子供にも好かれそうか。ていうか、オレの仲間とかにも好かれてるし。
そう考えると――――結構すごいレベルの「人たらし」かもな……。
でも。一番、惹かれてるのは、オレだけど。
優月の見上げている絵を一緒に見つめてから、優月に視線を移す。でも、キラキラした瞳でじっと見つめていて、今は全然こっちに気づかない。
まっすぐで。一生懸命で。素直で。
「人」が好きで。大事にして。
でも、ちゃんと、自分のことも、大事にしてる。
こんな感じの奴に、こんなに惚れて、こんなに一緒に居たいとか。
こんな純粋な感じなのに、オレの腕の中で、泣かせたいと思うとか。
一生、優月だけでいいと、感じる、とか。
今までの自分を振り返ると不思議でならないけど。
「優月……」
小さな声で、名を呼ぶ。
ぴく、と動いて、優月がオレを見つめる。
「……あ、うん。何?」
ふわ、と笑う優月。
「キスしてもいい?」
「え。……うん」
嬉しそうに、にっこり微笑んでオレを見上げてくる。
いつもみたいにゆっくり頬に触れて、手触りの良い肌をすり、と撫でながら、こういう時、くりくり見つめてくるまっすぐな瞳を見つめ返しながら顔を寄せる。
近づくにつれて、視線はオレの唇にうつりながら、ゆっくり目が伏せていく。唇に触れて、ちゅ、と小さな音を立てて、また触れる。
ゆっくりとしたキス離して優月を見つめる。その頭を、よしよしと撫でながら「ごめん。邪魔して。続き見て」と言うと。
「ていうか、ごめんじゃないよ?」
言いながら、優月はむぎゅ、とオレに抱き付いてきた。
「玲央、大好き!」
にこ、と笑って、オレを見上げて。
「オレこそごめんね、もうちょっと見せて。あ。あそこ、座ってて?」
くいくいと引かれて、部屋の隅にある椅子に、よいしょ、と座らされる。
「あ、それとも、戻ってる?」
きょと、とした顔で聞かれて、オレはなんだかおかしくなって、首を振った。
「いい。ここで待ってるから、気が済むまで、見てな」
「――――ありがと」
ちゅ、と頬にキスされて。
……何だか、鼓動が、とく、と。速まったような。
優月は、嬉しそうに歩いていって、また気に入ってるらしい絵の元に向かった。
……つか、オレが。
――――……この、オレが。
頬にキスされた位で。
と思うのだけど。
意図しない反応は、ごまかせない気がする。
(2024/3/30)
久しぶりに玲央side✨
イメージの色興味深かったです✨当たりとかあるものじゃないので♡ たのしかったです、ありがとうございました♡ コメント返信しますのでお待ちくださいませ。
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